格闘技の世界ではその名を知らない者はいない名門中の名門XXファミリー。
ルールからリングのサイズから使用するグローブまで決め、時には元オ◯ムの上◯広報並みの屁理屈を駆使してまで、どんな事があってもとにかく我々一族が最強である!どんな事をしても勝つ!というマーケティング戦略というかトータル戦略、もうこれは尊敬に値する。

そんな名門ファミリーの一員が、またやってくれたのだ。
数ヶ月前に東海岸で開かれたある大会で、この名門ファミリーの一員が仕掛けたリング外戦術は、今でも関係者の間では語り草になっている。
 



 
それは計量が終わった試合前日の夜のことだった。

その最強名門ファミリーの一員とスーパーファィトで対戦することになっていた某大型選手は、明日の試合に備えリラックス、リラックスと、ベットに寝っ転がりながらリモート・コントロールでチャンネル・サーフィン中だったのだ。

コン、コン。
うん!?今のはノックか!?誰だ、こんな時間に?
大型選手はのっそりとベットから起き上がりドアを開いた。

「コングラッチュレーション!」
おいおい、何だ、何だ、あれ、そのカメラ何よ!あれ、あんた、エド・マクマンじゃない?
マイク片手にビデオカメラマンを引き連れ、いきなり自分の部屋に飛び込んできたおやじを見て、この大型選手は気がついた。

「そうです、あなたは今ワン・ミリオン・ダラー(約1億1600万円)当たったのです!覚えてますか?ほら、この前、あんた、地元のコンビ二で応募したでしょ?」
この大型選手、コンビニで宝くじなんかに応募した記憶なんてま〜ったくなかったのに、まぁ、いいや、こんな時はそんなフリをした方がいい、とばかりに「オー、イエス!」なんていかにもあった、あった!なんてリアクションをしたのだ。
「そうです!あなたがラッキーワン!はい、ワン・ミリオンダラーのチェックです!」
と大きなパネルのようなチェック(小切手)を手渡され、エキストラだ何だか知らないが、カメラマンの後ろにいる、なぜか風船を持ったおばちゃんたちがキャーキャー騒ぎだしたのだ。

おいおい、何なんだ!?とその場の熱いエネルギ−に圧倒されつつ、この大型選手は、え、これ、このチェック、このまま銀行に持っていくのかな?と一瞬だけバカなことを考えてしまった。
いや、でもいいや、だって「あんたエド・マクマンでしょ?」とやっとさっきから聞きたかった一言が口から出たのだ。
「オフコース!わたしはわたし!エド・マクマンだよ!それ以外に誰がいるんだい!?」
おいおい、ちょっと待てよ、ちょっと待てよ。
落ち着け落ち着け。
と自分に言い聞かせたこの大型選手だが、こんな状況で落ち着くといっても、彼には限界があった。

目の前には、昔テレビで「トップ40!」とかやっていたあのエド・マクマンがいるんだぜ。
という事は、間違いない!俺、ワン・ミリオン当たったんだ!
うぉぉおおおお〜!
大きく雄叫びをあげると、もうすべてがどうでもよくなってしまったのだ。

これで滞納している家賃も払えるし、彼女に借りている金も返せる!いや、そんな事より念願のマイホームに黒のハマーだ!と思ったかどうかは定かではないか、とにかくすべてが変わる!とこの大型選手は信じたのだ。
よし、俺は明日から億万長者だ。ふん、何が試合だ、飲みにいくぞ!
アスリートとしては、ここまで厳しい練習を乗り越えたきたんだからその成果をみたい、体で感じたい、と考えるもんだとは思うんだが、この大型選手にとって、ワン・ミリオンはデカかった!
もちろんチームメイトの言う事なんぞに聞く耳を持たず、俺はリッチだ〜、とネオンの世界に走っていってしまったのだ。

そして朝5時。
クレジットカード使いまくってねえちゃんたちをはべらかして、シャンパンをラッパ飲みしながらカラオケでボン・ジョビを熱唱しベロンベロンになってホテルに戻ったこの大型選手。
ドアを開けると、入ったすぐの床の上に大きな白い封筒がおいてあったのだ。

何じゃぁ、こりゃ?
すべての物が二重に見えるほどのへべれけ状態だったが、この大型選手、何とかこの封筒を拾いあげ、中をみてみると、写真が一枚だけ入っていた。
何だ、こりゃ?とその写真をみると、そこに写っていたのはビール片手に肩を組んだふたりの男だった。
あれ、これって........あ!あいつだ!
大型選手は気がついた。
写真の男は、今から15時間後ぐらいに自分とリングで戦うあの名門ファミリーの一員、そして肩を組んでいるのは、さっき俺の部屋にいたエド・マクマンではないか!
おいおい、ちょっと待てよ!どういう事だ!?

この大型選手、もうその時は、一瞬にしてすべてがパッチリ見えるようになったらしい。
酔いが醒めた、という程度の感覚ではない!氷の滝に放り込まれた!冷たすぎて痛い!
ちょっと待てよ、ここのカジノ、いま、そっくりさんショーやっているのか?
何だか冴えちゃって閃いたこの大型選手は、ホテルのパンフレットをめくってみた。すると............
そこには青い背広に青いネクタイをしたあのエド・マクマンのそっくりさんが写っているではないか!
騙された!
うぉぉぉおおおおおー!
この夜、二度目の雄叫びをあげときは、すでに手遅れだったのだ。
くそぉー、もう今晩のファイトマネーの三倍ぐらい使っちゃったよ〜!
この大型選手、噂によると、その場でモニカ・ヴィッティのように膝から床に崩れ、わんわんと泣き出したらしい。
 



 
その晩、この大型選手、リングの上では切れまくり。
ゴングと同時に名門ファミリーの一員を捕まえ持ち上げロープの上から外に投げるというプロレスみたいな反則行為をみせ、レフェリーにこっぴどく怒られ1ラウンド開始早々いきなり減点1を喰らったのだ。

しかし、どんな事をしてでも勝つ、というこの名門ファミリー、恐るべし、というしかない。
そしてこの大型選手、はっきり言って馬鹿、フォローの言葉どころか慰める気にもならない。と試合後は散々みんなに言われたらしいが、最近は、億万長者になったと信じてそれがま〜ったくの嘘だったと気がつく、これは辛いよな、とチームメイトもやや同情モードに入っているとのこと。

え?名門ファミリーの一員とこの大型選手の試合の結果?
でもそこまで書いたらこの大型選手が誰だか判っちゃうと思うので、それはご勘弁ください。

2006-09-10 10:03 この記事だけ表示

 アメリカの総合ファン、そして選手たちの間では大切な情報交換の場となっている、「格闘技サイトの掲示板」に、ある有名なキャラクターがいる。
 彼のハンドルネームは「ワンマン・ギャング」。
 元レスリング選手で、高校生のときはオールアメリカンにも選ばれたと自分でいっているらしいが、真実は定かではない。
 総合戦績は自称1戦1勝。しかもこの試合、聞いたこともない小さな小さなローカル大会でのタイトルマッチだったらしく、ワンマン・ギャングくん、掲示板に登場するときは、必ずこの時に獲得したチャンピオン・ベルトを腰に巻いた自分の写真付きなのだ。
 そう、奴は究極のエゴイストなのだ。
 けどワンマン・ギャングくんが投稿する写真、これはこれで結構面白い。
 ベルトを巻いたままスパーリングしていたり、ベルトを肩にかけてバーカウンターでビールを飲んでいたり、ベルトを頭の上にのせ両手にブロンド美女を抱えてふん反り返っていたり。
 でも投稿する内容がスラング満載のひとりよがりなものばかりだから、選手たちの間では酷評どころか、機会があったらニーでも一発顔面に喰らわしたろうか!と思われているほど、嫌われ者ナンバーワンなのだ。
 



 
「あいつ、ワンマン・ギャングじゃねぇか?」
 UFCウェルター級でも活躍していた元士道館の空手家デイブ・ストラッサーがわたしに聞いてきたのだ。
 3月4日にアトランテック・シティーで開催された「MFC 6 - Boardwalk Blitz」大会後、選手たちの宿泊先トランプ・タジ・マハール・ホテルのバーでのことである。
 デイブにいわれて細長いバーカウンターの端のほうをよーく見てみると、いるではないか、ワンマン・ギャング!間違いない!
 何と奴はここでもベルトを腰に巻いていたのだ!


 そのときプロモーターや選手たち15人ぐらいと飲んでいたのだが、わたしの隣に座っていた女子格闘家のタラ・ラローサ(写真)が、思いっきり感情のこもった口調で、ほんと、それこそ腐った食べ物でも吐き出すかのようにいったのだ。
「わたし、あいつの事、大嫌いなのよ!もう、見る度に、バシッ!と一発かましたくなるの!」
 タラがそういうと、ワンマン・ギャングくん、こちらを振り返り、我々のほうにむかって歩いてきたのだ。
 もちろん、ベルトを腰に巻き口の端に煙草をくわえながら。

 我々のいたところからバーカウンターまでは距離があるし、バーには音楽がガンガン流れているんだから、いまのタラのコメントが奴の耳まで届いた筈ないんだけど........。
 ワンマン・ギャングくん、我々のところに寄ってくるとまず馴れ馴れしくデイブに「今日の試合はよかったよ」といって握手を求め、そのあとわたしの方をみると「シュウだろ?おれがワンマン・ギャングだ」と手をだしてきたのだ。
 「よう」と適当に握手をすると、ワンマン・ギャングくんは他の選手たちに「ビール奢らせてくれ」。しかし選手たちは全員「ノー・サンキュー」。
 その場の雰囲気とうのがてんで読めないワンマン・ギャングくんは、オッケーというと、また自分の仲間がいるバーカウンターに戻っていったのだ。

 するとタラがすかさずわたしに「ほらね、あいつは女性に対してのリスペクトがないのよ。わたしとロクサンなんて無視じゃない!?」
 確かにワンマン・ギャングくん、タラだけでなく、隣に座っていた、ついさっきタラと激闘を繰り広げたばかりのロクサン・モダフェリにも一瞥もくれなかったのだ。
 そこで、ちょっと面白いかな、と思ったわたしは「タラ、カウンターまでいっていきなりフライング・ニーをあいつの顔面に喰らわしたら1000ドルやるよ」。
 焚き付けてみるもんです、タラは「え、ほんと?やる、やる!」と本気になってしまったのです。
 おい、おい、ちょっと待って。タラちゃん、それはまずいよ。そんなことしたらセキュリティーがきて警察呼ばれて逮捕されて、わたしが保釈金払ってあんたのことを鑑別所まで迎えにいかなくちゃいけないじゃない!?タラちゃん、ちょっと待ちぃーな!
 



 
 「いや、もっといいアイディアがあるぞ!」
 ここで弱冠21歳にしてプロ総合戦績7勝1敗のウェルター級強豪選手Aが割って入ってきた。
 「あいつのベルトを盗もう!」
 もちろん、その場にいた全員の目がピカッと光りました。
 「盗んだらさ、僕が覆面被ってそのベルトを腰に巻いた写真を掲示板に投稿するよ、『ワンマン・ギャングよ、ベルト返して欲しかったら俺と闘え!』とね。あいつをリングにひっぱりあげよーぜ!計量のときも入場のときも僕は覆面をしたままでさ、試合開始直前にリング上で覆面をとる。そしたらあいつビビるぜ!第0試合ということでやればいいんだよ」
 タラもデイブも、そしてその場にいたMFCのマッチメーカーもこのアイディアには大賛成!(←ほんとかよ、マッチメーカーさん!?)

 よし、じゃぁ、盗むぞ!ということで我々はさっそく作戦会議。
 デイブがまずワンマン・ギャングに近付き「一杯飲もう」と話しかける。しばらく飲んだら、ちょっとそのベルトをみせてくれ、と奴の腰からベルトを取る。ベルトを少しみて、いいね、とか何とか適当なことをいってデイブはそのベルトをカウンターの上に置く。次ぎにわたしがワンマン・ギャングくんを、ちょっと聞きたいことがあるからと誘い、バーカウンターから少し離れたところまで連れていく。その間にカウンターにおいてあるベルトを、タラが取って逃げる!
 よし、完璧なプランだ。もう少し奴が酔っぱらってきたら作戦実行だ!
 という事で、我々は時折ワンマン・ギャングをチェックしながら飲み続けた。
 約1時間後、細めで小柄だけど、とーってもセクシーなスパニッシュのねえちゃん二人のおっぱいを指で突っ突き始めたワンマン・ギャングくん。
 足元はどう見ても千鳥足!
 よし、機は熟した!

 まずデイブが作戦通りにワンマン・ギャングの腰からベルトを外すことに成功。
 そこでわたしが、ワンマン・ギャングに「お前どこに住んでんだよ?」と話しかけ「おまえの住んでいるエリアの情報が欲しいんだけど、ちょっと、二人だけで話したいから」と奴の肩に左手をまわし、バーカウンターから10メートルほど離れたとこにある花壇の反対側まで連れ出した。
 そしてわたしとワンマン・ギャングと入れ替わりに、満面の笑顔でタラがカウンターに近付きベルトを強奪!
 え、でもこのベルト、どこに持っていったらいいの?
 うまくベルトを手中に収めたのに、タラはベルトを片手にあっちふらふらこっちふらふら。(我々の作戦も相変わらず詰めが甘い!?)

 ワンマン・ギャングはまだ気がついていないんだから、早くバーから出るとか、とにかくベルト持ってどこかにいってくれ!とわたしが心の中で叫んでいると、それを察知したかのようにマッチメーカーがタラに駆けより「俺の部屋に隠すんだ!」
 タラとマッチメーカーはバーからエレベーターまで全力疾走!
 ここで異変に気が付いたワンマン・ギャングくんは振り返った。
 ウォァー!
 ベルトを持って走り去るタラの後ろ姿をみつけると意味不明の言葉を発し、物凄い勢いでワンマン・ギャングは走りだしたのだ!
 バーにいた選手たちはもちろん大爆笑!
 まるで興奮したさいのように走っていったワンマン・ギャングくん。でも、時すでに遅し、だった。
 タラとマッチメーカーはエレベーターにのりこむと、バイバイ。
 非情にも(?)ワンマン・ギャングくんの20メートルぐらい先で、エレベーターのドアは閉まってしまったのだ。
 



 
 がっくりと肩を落してバーに戻ってきたワンマン・ギャングくん。
 けど腹を抱えて笑い転げている強豪選手たちには何も言えない。
 そこでトボトボと我々のところに寄ってくると、タラの親友でもあるロクサンに
「あのベルト、タラは返してくれるかな?」
 真面目が服を着て歩いているようなロクサンが「タラに優しくしてあげたら、返してくれると思うわよ」と慰め口調でいうと、ワンマン・ギャングくんは蚊の鳴くような声で「そうか」と呟き、大きくため息をつくとバーカウンターにいる仲間の所まで戻っていったのだ。

 果たしてAは覆面をつけ、このベルト巻いた「謎のキャラクター」としてネットの掲示板に登場するのだろうか?
 そしてベルト奪還をかけたオチャラケ・マッチが本当に行われるのか?
 そこのところはまーったく予想がつきません。
 でもこの国の大人たちは、ほんと、いつまで経っても大人になりたくない人たちばーっかりです。それはもうどこの業界も同じみたいです。
 ただそれだけのことなのかもしれません。

(※可能性は限り無く低いと思いますが、このオチャラケ・マッチが実現しちゃったときの事を考慮して、今回の「ベルト強奪作戦」を提案した選手の名前だけは「A」とさせて頂きました!)

2006-03-07 18:51 この記事だけ表示
今回は本誌の英語版「BoutReview USA」の編集長・シュウ・ヒラタさんがe+ブログ初登場です。シュウさんはニューヨーク在住。向こうじゃなきゃ入って来ないような面白いネタに今後もご期待ください。(井原)


 今年もアメリカ総合格闘技界は、相変わらずUFCに振り回される日々が続きそうです。
 ここで実際の選手名や大会名を記すことはできないですが、わたしの知っている限りでも、試合の一週間とか二週間前に、ズッファからのオファーがあったからと選手が言い出した為に、メインイベントが吹っ飛んでしまった大会が去年一年間で5つありました。
 そうです、いまアメリカで総合格闘技の大会をやっているプロモーター、マッチメーカーたちのほとんどは「でも契約があるじゃないか」とこういった時に踏ん張るのではなく「まぁ、UFCなら仕方がないか」とすぐに諦めモードになってしまうどころか「世界中のオーディエンスの前で試合をするチャンスだから頑張れ」とかいいだしグッド・パーソンになってしまうのです。

 「お前の大会はどうなるんだ?それよりもこの試合がみたいと思ってチケット買ってくれたお客さんのこと考えたことあんの?」とも思うのですが、自分の大会に出ていた選手がUFCに出れば宣伝になる、スポンサーたちに自慢できるなど、他にも色々と思惑もあるようで最後はいつも「UFCなら仕方がない」となってしまうのです。
 本気でUFCと対抗しようと思っているプロモーターたちがこの国にどれだけいるのか。いや、それを公で露にしなくても、いつか並んでやる、追いこしてやる、という内に秘めた野望を持っているのか。アメリカの選手たち、そしてそのマネージャーたちにとっては、2006年という年はそれをどう見分けるのかが大切な年になるのではないでしょうか。

 しかし問題はプロモーターやマッチメーカーたちだけでもないんです。

 アメリカの格闘技の会場といえば、やはりカジノ・ホテルです。しかし最近はこのカジノ・ホテルも、総合格闘技となるとUFCに振り回されているのが現状であります。
 今年も新年早々、米東海岸のギャンブルのメッカ、アトランテック・シティー(以下AC)でもUFCに振り回されて、3つの総合格闘技の大会の日程と開催場所がすべて狂ってしまったというハプニングが勃発しました。

 UFC 58はどこで開催されるのか!?
 ズッファが3月4日、ACのボードウォーク・ホールをおさえている。そんな噂が流れたのが去年の12月でした。
 数年前から総合格闘技に着目し、試行錯誤を繰り返しながらもプロモーターたちと付き合ってきたACの三つのカジノ・ホテル、トランプ・タジ・マハ−ル、トロピカーナ・カジノ、そしてシーザーズ・パレスの上層部は、この噂を耳にした途端、それこそもう条件反射的に、じゃぁ、その一週間前の2月の最終週、それから一週間後の3月10、11、12の金、土、日、この二つの週末は総合格闘技大会の開催はNGね、と決定してしまったのです。

 「え、ちょっと待ってよ、28日はうちで決定したって言ったじゃない?もう口頭契約しちゃってる選手もいるんだよ」、とトランプ・タジ・マハ−ルに慌てて電話をしたのは、同ホテルのアリーナで2月28日に第6回大会を予定していたMFC(Mixed Fighting Championship)。そして「今年は3大会契約で初っ端は3月の第一週と言ったでしょ?」とトロピカーナ・カジノに確認する羽目になったのが3年振りのAC復帰を狙っていたROC(Ring of Combat)。「え、じゃぁうちの2月のボード・ウォークはなし?だったら他の会場探さないといけないんだから教えてよ」ということになっちゃったのがアメリカで唯一オクタゴン・リングを使っているRF(Reality Fighting)。
 けどカジノとプロモーターの間でも「UFCだから仕方がないか」という暗黙の了解があるかのように、ここでも「何とかならないか」と踏ん張るプロモーターは皆無でした。でも結局、蓋を開けてみたらUFC 58はベガスで開催。慌てて会場のスケジュールをスクランブルしたカジノ・ホテル、そして他の会場を探したプロモーター、もうみなさん、お疲れ様でしたとしか言えません。

 アメリカでは、昔から格闘技といえばリングです。ボクシングもキックボクシングも、二人の男が己の頭脳と肉体だけを駆使し雌雄を決する場は、常にロープで囲まれたリングでした。
 しかしUFCでの闘いの場は、みなさんも御存知の通り、オクタゴン、つまり八角形の金網で囲まれたマットです。これがUFCの専売特許、トレードマークでもあるのですが、裏を返せば、ここが狙い目であると考えるプロモーターがいてもおかしくないと思います。
 ロープで囲まれたリングで、UFCとは微妙に違ったルールで試合をする大きな大会がもうひとつあれば、野球のアメリカン・リーグとナショナル・リーグのように、総合格闘技は、ファンのイマジネーションを掻き立てるもっともっと面白いプロ・スポーツになると私は思うのですが…。

 UFCはオクタゴンで肘打ち有りだけどグラウンドでの膝蹴りは禁止、それならこっちはリングで肘打ちは無しだけどグラウンドでの膝蹴りはOK。アメリカン・リーグは指名打者制度があるけどナショナル・リーグはなし。じゃぁ、ナショナル・リーグのピッチャーはアメリカン・リーグでどれだけの防御率が稼げるのかとか、アメリカン・リーグのピッチャーが打席にたつ所をみてみたい、とファンが考え論じるのと同じように、あの選手はオクタゴンのルールでは強いけど、リングのルールだとどうなるんだろう? ランディ・クートゥアがグラウンドでの膝蹴り有りで試合したらめちゃくちゃ強いぜ、といった具合に、ファンはもっと興味をそそられるだけでなく、ルールが少し違うだけで試合結果も変わってくる総合格闘技の奥深さも充分に伝わる、と考えるのは私だけでしょうか。

 もちろん、アメリカでペイ・パー・ビュー放送されているPRIDEがあるので(昨年からFSNというケーブルチャンネルで、一時間のアーカイブ形式の番組も月に一度ですがオンエアされております)、この国でもルールの違いや総合格闘技の奥深さをすでに熟知しているファンはたくさんいます。
 ただアメリカというのは「アメリカ産じゃなくちゃいけない」というまだまだ田舎もん意識を強く持った国民が多々いる国なのです。字幕付きの映画を観る人が、いや、観た事のある人が国民の1%にも満たないこの国では、スポーツとエンターテイメントは、やっぱりアメリカ産好みなのです。(少し古い例になりますが、邦画「Shall We Dance?」がアメリカで公開されたときも、国民のほとんどが知らない東洋人の役者の顔をポスターに載せたら興行成績に響くからと、どの広告にも黒いタキシードの足と赤いドレスの足がクロスするイメージしか使わなかったぐらい、この国はアメリカ産好みなのです)

 よし、それならUFCと肩を並べてやる、と意気込むプロモーターがアメリカにいる事はいるんですが、なかなかそのやる気に行動がついていかないというか、決めたことをやり遂げるしつこさがないというか、非常に難しい状況であります。

2006-02-06 01:42 この記事だけ表示
 
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