小林聡さんがGMに就任し、タイ遠征も盛り上がり、10月25日の代々木第二のビッグイベントに向け、じわじわと熱を帯びてきている全日本キックの、公認ファンサイト「AJ☆JACKS!」が6月にオープンしました。
 主催者は元kamiproの「ささきぃ」ことライターの佐々木亜希さん。AJ☆JACKS!というサイト名は、All Japanを略したAJという通称と、新日本プロレスの90年代初頭のB級(?)タッグチーム・JJジャックスを引っかけたもので、このあたりのセンスが元kamiproの方らしいなあと思いました。
 佐々木さんはkamiproに入った頃(当時は紙プロ)はキックの取材はしていませんでしたが、全日本キックに出会って惚れ込み、会場や会見では必ずお見受けするように。NJKFとかJ-NETとかにも来られるようになった時は驚きましたねぇ。同誌からすれば畑違いだった立ち技分野に力を入れ、「Stand By Me」というコーナーをスタートさせたほどです。前の投稿で「キックの星」の功績を讃えましたが、佐々木さんもそういう意味で、キックの普及の貢献者といえましょう。

 7/29(日)に全日本キックは後楽園大会を開催しますので、この大会のメインとセミでオランダ人と対戦する山内裕太郎選手山本優弥選手のインタビューが、「AJ☆JACKS!」には掲載されています。レイアウトや構成が雑誌っぽいですね。
 ブログも開設されてて、山本元気選手のWBCムエタイ挑戦発表会見の様子も書かれてますが、心理描写が男から見る感じとは少し違ってて面白いと感じました。そのへんの女性らしいテイストは山内&優弥インタビューでもそうで、女性ファンの一般的な心理に近いでしょうね。

 で、話は少しずれますが、格闘技・プロレス雑誌も、思い切って女性編集長を立てて、女性スタッフ中心で作る女性読者ターゲットの雑誌なんて作ったら、需要は無いんでしょうかね? K-1 MAXは当然として、PRIDEでも女性ファンが意外と多かったので、女性ファン層は確実にあるのですが、じゃあ既存の雑誌をどれだけ買ってたかというと、ほとんど敬遠されていたと思うんですよね。買う人でも、どこか物足りないと感じていたと思います。それはプロレス雑誌の作る、女性を意識した企画モノでも同じです。「女性受けする雑誌」じゃなく、「女性誌」そのものになるくらいの思いっきりがあってもいいでしょう。
 とはいっても格闘技に興味が無い女性が作ると、勘違い雑誌になってしまう恐れは大ですので、何でもかんでも成功するとは限りません。女性格闘技ライター自体が少ないのも問題点ですね。でも、AJ☆JACKS!のような切り口の延長線上なら、面白いものができるんじゃないかと、ふと思ったのでした。

2007-07-26 16:10 この記事だけ表示   |  コメント 2
PRIDEの活動が滞っている現状、ヒョードル選手といえば、次の戦場はUFCか、bodogか、HERO'Sか、といった話題中心となっています。
試合が決まらない今、彼は何をやっているのかというと、練習はもちろんですが、ロシアでセレブレティーの一人として格闘技中継の解説をやったりオリンピックの招致応援をやったりと、西へ東へと飛んでいるそうです。

ヒョードル選手の公式サイトの記事「移動して活動、活動して移動。」には、そんな合間のステキな休暇の様子が。カフカスの温泉郷で泥まみれになったヒョードル選手の姿は必見ですよ。釣りの様子も絵画作品のようで、僕もたまにはこういうのんびりした時間を過ごしたいなあと思ったのでした。
2007-07-23 15:42 この記事だけ表示   |  コメント 4
 6月をもって、サムライTVの人気番組「キックの星」が全267回、5年3か月の歴史に幕を閉じた。
 サムライの7月の改変期に合わせ、修斗とDEEPとPRIDE武士道の各番組も終わり、格闘技系の単体番組で残ったのは、外部制作の「K-1バトルスクランブル」だけ。プロレス番組の「インディーのお仕事」は生き残った。毎日9時からのニュース番組のうち、土曜日の格闘技の日はそのまま残ったものの、格闘技の日が週1なのは変わらない。
 サムライTVの放送内での自社CMでも、大会中継枠を増やす方針を打ち出しているが、格闘技の7月の番組に関しては、そんなに増えたようには思えない。公式サイトを見ても、もっぱらアピールしているのはプロレス中継の方。全体として、プロレス優遇の路線がより強まった感は否めない。
 ここ1年でプロレス週刊誌(紙)は3つから1つに減った。週刊ゴングの元スタッフがようやく月刊誌をスタートさせるようだが、以前ほどのスケールでの売上はなかなか難しいところだろう。プロレスファンの数は減ったが、コアなファンの支持は根強く、サムライTVはそういった層を維持&拡大する路線を選んだと分析できる。
 格闘技専門誌は不定期の物も含め増加したが、1年先の行方は不透明だ。PRIDEの休止が続く中、格闘技人気というパイが、果たしてどれほどの大きさなのか計りきれないことも、「キックの星」終了の背景にあるのかもしれない。

 とはいえ、「キックの星」は、キックマニアだけでなく、プロレスや総合のファンの間でも評価の高い番組だった。特に「通信モノ」と言われる、選手がビデオカメラを持って毎日の練習や生活をセルフ撮影した映像を放映するシリーズは人気が高かった。
 選手が家族や友人といるときに見せるリラックスした姿、減量やハードな練習で苦しむ姿(試合前の選手はほぼ毎日体重計に乗り、その様子もビデオにおさめる)、計量直後に好きな食べ物をとても美味しそうに食べる姿、試合直前までのバックステージでの緊張しきった表情、そしてリング上でくっきりと分かれる明と暗。
 これらをありのままにさらけ出す通信モノの中でも、我龍真吾選手と須藤信充選手のシリーズの人気が高かった。二人が強烈な個性の持ち主だったことはもちろんだが、揃って初期は引退状態から這い上がる姿を追いかける内容だったこと、K-1 MAXを目標とし実際に日本トーナメント参戦に近づいた時期があったこと、減量が毎度毎度波乱の連続だったこと等も面白さの要因だろう。
 二人の通信モノはキックファンならずとも感情移入させるものがあり、通信を通じてファン層を広げることに成功した。2人の揃い踏みが当初発表された4月のR.I.S.E.後楽園大会のチケットは、本誌が過去取り扱った後楽園のチケットでもトップクラスの売れ行きだった。出場選手の誰か1人のサイン色紙を特典につけることにしたところ、須藤選手がぶっちぎりの1番人気だった。結局二人とも欠場してしまい、キャンセル処理も大変だったが、実券層にアピールする番組だったことを痛感させられた。新潟や鳥取や九州といった地方在住の方からのチケット注文の比率が高かったことにも驚かされた。

 今、日本のPRIDEをも飲み込んだアメリカのUFCバブルのきっかけは、「ジ・アルティメット・ファイター(TUF)」というリアリティショー番組だった。これも選手達の試合に向けての練習生活に密着するという点では「キックの星」の通信モノと共通するところがある。洋の東西を問わず、戦う者たちが自然に持つ生の輝きや、試合でシビアに審判の下される勝敗の残酷さといったノンフィクションは、平均的なクオリティのフィクションよりも強い感動を人々に与えるようだ。
 実際、キックボクシングは再ブームの波が来ている。「キックの星」がファン層を拡大したことも、いくつか挙げられる要因の一つとして数えられるだろう。キック再ブームの中心軸ともいえる全日本キックは10月、ついに代々木第二体育館に初進出する。大会の目玉になる肘有り60kgトーナメントを「Kick Return」と名付け、キックボクシングそのものをアピールする路線を打ち出している。
 そういったいい波が来かかっている中での「キックの星」の終了は、とても残念でならない。「キックの星」が終わっても、この番組でキックに興味を持った人は、興味を持ち続けて欲しいし、本誌もそんな人たちにこれからもキックを愛してもらえるような記事作りをしていかないといけないと強く感じている。もっとも、「Kick Return」にちなんでじゃないけど、「キックの星 リターン」の日が来てくれれば、これほどマスコミの側にとっても心強いものは無い。
2007-07-15 16:03 この記事だけ表示   |  コメント 3
 各団体から対戦カード等のプレスリリースのEメールが届く時、たいてい選手の写真が何枚か付いて来るものですが、外国人選手の場合、「なんでそんなとこで撮んねんッ!?」とツッコみたくなる写真がたまにあるものです。

 こちらは今日ニュースにしました、J-NETWORK 8/3 後楽園大会での西山誠人選手との対戦が決まった、韓国のパク・キジョン選手。

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 誌面ではトリミングして載せましたが、元の全体画像はこんなので、何故か暖炉や高級そうなイスが後ろに。どこかのホテルで撮ったのかなあ? 照明のバランス良さや発色は間違いなくプロの腕前なのに、肝心のロケーションのチョイスがズレてるのが不思議です。カンフーアクション映画ならこういうシチューエーションも無いことは無いでしょうけど。

 続いてNJKFで大活躍中のアルティメット・ウォリアー、ルンピニースタジアム現役スーパーフェザー級王者・センチャイ・ソー・キングスター様。ピンポイントで相手に着実に当てる左右の蹴り技、合気道のようにほとんど相手に触れるだけで倒してしまう神技、「選手」じゃなく「様」と呼んでしまいたくなるほど惚れ惚れするファイターです。7/1後楽園の石毛戦に続き、7/29のディファでのイラン人との対戦でも度肝を抜いてくれるはずですが、彼のリリース写真はなぜか線路の上でございます。

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 ムエタイとは全く関係無いシチューエーションですが、たぶん誰かがジムの近くでいい場所が無いかと思って提案して、その場のノリで通っちゃったんだろうと推測します。普通に草むらが背景なら何もおかしくないんですけどね。「センチャイの神業をもってしてなら鉄道の馬力でさえも封じる」とか「センチャイの戦いの旅はこの線路のようにどこまでも続く」とか、そんなイメージをいちいち作って撮ったとも思えませんし…。タイのドラマか映画でこういった光景の元ネタがあるのかなあ。
2007-07-05 17:23 この記事だけ表示   |  コメント 0
 「PRIDE戦線予定ナシ」 これは格闘技通信の最新号の表紙のキャッチコピーです。このフレーズは「西部戦線異状なし」という第一次世界大戦のドイツ軍の青年志願兵を描いた小説(新潮文庫。映画化されています)の題名が元ネタです。バブル時代に織田裕二主演の「就職戦線異状なし」という映画もありましたが、何かとネタにされやすいということは、よくできた邦題だということの裏返しともいえましょう。

 僕はこのレマルクの「西部戦線異状なし」という小説に大きな感銘を受けました。主人公のとある青年が、学校の教師の扇動で志願兵となり、地獄のような日々を送り、クラスメイトがみな次々亡くなっていきます。最後はついに主人公が戦死するのですが、その日は全戦線において穏やかで静かだったことから、軍の司令部は「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」とだけ母国に伝えた、というのが、非常に大ざっぱなあらすじです。
 社会に対する個人の悲しいまでの軽さ、社会的な理想論や観念や常識と個々人の抱える現実のギャップ、個が社会に振り回され無意識のうちに破壊される様を描いており、それから100年近く経った現代の日本にも通じる話です。
 それは改憲とか集団的自衛権(他衛権と言ったほうがいいような…)の議論が、実際の戦場や現場の自衛官に起こっていることを直視していないような形で進んでいるから、というのも一つの理由ですが、それよりも、この小説は反戦小説という分類に簡単におさまらないから、というのが大きな理由です。

 この小説の冒頭にはこんなメッセージが書かれてあります。

「この書は訴えでもなければ、告白でもないつもりだ。
 ただ砲弾は逃れても、なお戦争によって破壊された、
 ある時代を報告する試みにすぎないだろう。」

 戦場に行く兵士に限らず、私たちも、自分たちの人生の辛い出来事を振り返る時、そういったどこか冷めたスタンスがあると思います。「訴え」や「告白」といった紋切り型では片付けきれないモヤモヤ感がつきまとっており、そういうスタンスで書かれたからこそ、この作品は強力なリアリティを発揮しています。過労やノルマにより鬱に追い詰められるサラリーマンや、社会の建前の中で何か居心地の悪さを感じているOLにとっても、身近な物語として感じられるのではと思います。
2007-06-30 23:15 この記事だけ表示   |  コメント 4
 バウレビのトップページ最上部でお伝えしているとおり、バウトレビューレディオショー久々の配信となった第3回には、吉鷹弘さんが登場しました。
 第1回は井田編集長と私・井原の某公園での対談、DJ.taiki選手へのメイド喫茶でのインタビュー、第2回は六本木ヒルズアリーナでのPRIDEの会見。外での録音物の配信が多く、ノイズは付き物でした。だけど今回のジムの雑音は、ミットを打つ音や選手の息や掛け声で、格闘技の番組らしい空気感があってなかなか心地良いですよ。

 番組では吉鷹さんが監修したクエストのDVD「吉鷹 弘 総合格闘技完全打撃マニュアル」を紹介していますが、宣伝抜きでこれはオススメの商品です。専門誌でよく技術解説企画をやっていますけど、動きの変化を写真ごとで見比べたり、小さな文字と写真の間で目を上下左右させて理解する作業は結構面倒なものです。それが映像ですと、一般的なスポーツ中継やニュース番組での解説でもよくやっている技術解説と同じで、風呂上がりにボーッとした状態で見てても、すんなりと頭に入ってきます。
 特に吉鷹理論のDVDは、キックやボクシングの打撃と、総合の打撃の比較を、ストレート・フック・ミドル・ロー・あるいは防御といったところまで、徹底的に紹介しています。左にキックボクシング、右に総合の同じ攻撃の映像を映し、サーッと両方が真ん中に動き、重なり合って構えの高さやリーチの違いがわかるという効果も映像ならではです。
 それと吉鷹さんの説明の明快さもDVDのクオリティを上げているポイントでしょう。なぜそうなるのか、それは人間の体がこうなっているから自然とこう体が動く…といった説明が多く、格闘技をやらない人にとっても親しみやすい話として耳に入ります。
 今、ボクササイズ系のダイエットのDVDで「ビリーズブートキャンプ」が流行ってますが、ちょうどああいう感じで、バウレビでもヒット商品になればいいなぁ。ダイエットは自分で動かなきゃいけなくて大変ですが、吉鷹理論のDVDは、見るだけでOK。格闘技の新しい見方を知ることができ、格闘技観戦がよりいっそう楽しくなるでしょう。

 チーム吉鷹についてさらに詳しく知りたい方は、公式ホームページをチェックして下さい。技術論のページの内容が凄いですよ。
2007-06-27 23:24 この記事だけ表示   |  コメント 4
 K-1ワールドMAXの世界一決定トーナメント開幕戦が、6/28(木)に日本武道館で開催されます。そのちょうど一週間前となる21日、三軒茶屋のシルバーウルフで魔裟斗選手が公開練習を行いました。バウレビの記事はこちらです。
 魔裟斗選手の場合、1Rだけ軽い動きを見せる一般的な公開練習をやることは無く、普段の練習をほぼそのまま公開します。もちろん秘密特訓の類いを見られるわけは無いのですが、公開練習前に20分近く入念にマッサージをして、シャドーボクシングで体を温めて、その後実戦に近い動きで数ラウンドのスパーリングをやるので、体の仕上がり具合がはっきりとわかるのです。
 今回は3R。つまり普段の試合と一緒のラウンド数です。しかも相手が大宮司選手で、スピードのあるパンチでガンガン前に出るもんですから、試合を見ているような迫力でした。
 というわけで、当然そんな取材の場合は、誌面で使う写真以外にもいい写真がございますので、海賊版の方で公開いたします。魔裟斗選手がパンチをもらってる写真のほうが多いのですが、それだけ本格的なスパーリングだったってことを伝えたいために、あえてそういうのを重点的にチョイスしました。

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2007-06-22 00:57 この記事だけ表示   |  コメント 4


 今回は9日のケージフォースで苦戦したウマハノフ・アルトゥール選手について書きます(2回連続でケージフォースとSKアブソリュートの選手の話題となったのはたまたまです)。
 詳しくはまずバウレビの記事を読んで頂きたいのですが(上のリンクから見て下さい)、1R、美木選手のローキックを、そんなに奇麗な形で当たったわけではないのですが、サポーターをつけている左膝にもらったウマハノフ選手はしかめっ面を浮かべます。以降はタックルに行っても右のパンチを振っても踏み込みが甘くなります。美木選手のセコンドは「相手スピード半分に落ちたぞ」と叫んでました。
 2Rに入ると、ウマハノフ選手の表情が弱々しくなったように感じられます。これまでの試合では見せた事の無い表情でした。攻撃の手数が減り、鼻血も出し、敗色が濃くなって来るのですが、それでも少しずつパンチやハイキックを当て、ラウンド最後には毎ラウンド必ず1テイクダウンを取っているんですね。
 試合後わかったのですが、左膝だけじゃなく右拳も試合中に痛めたそうです。それでも手数を出し、何としても勝とうとした執念というのは、やはりロシア軍の特殊作戦部隊時代に培ったもののような気がします。「左膝と右拳は使えないけど、もしこれが戦場なら、俺が少しでも弱気になったら殺される」という考えが、何度もウマハノフの頭に浮かび、それがウマハノフ選手を奮い立たせ、前に出させたのではないかと勝手に推測します。
 判定2-1とはいえ、ウマハノフはこのライト級王座決定トーナメントという戦場で生き残りました。いわゆる「ウマハノフ幻想」は半減した試合ではあるのですが、それは主に体調に関わる部分の話で、ハートに関しては、まだ幻想は十分あり、それが他の面に反映させる力は底知れないように思います。
 この大会に出たキラービーの選手の公開練習の記事の締めに「技術はもちろん、その支柱となる集中力や負けん気といったハートを、二人(=菊地と朴)が試合の瞬間瞬間でどう発揮するかにも注目して欲しい」と書きましたが、今回はそれをウマハノフ選手の試合で一番見せつけられました。負けましたが、美木選手からもそういうハートが感じられました。
(冒頭写真はハイキックのカットとどっちを使おうか迷った末にボツした写真です)
2007-06-13 11:18 この記事だけ表示   |  コメント 0
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 5月27日のケージフォースの記事は、「パンクラス王者・石毛、英国金網王者に完敗」という見出しで掲載した。だが、光となった勝者・ダン・ハーディと、陰になった敗者・石毛大蔵のコントラストを強め過ぎ、石毛について大事なことを書き逃してしまっていた。

 石毛は敗れた。しかしKO負けじゃなく、判定負けだった。
 1Rに2回、ハーディのパンチでダウンした後、もうダメだろうと思ったが、石毛はケージの中をステップじゃなく、逃げるように走り回った末、インターバルまで耐えきった。
 2Rのチョークスリーパーでの逆転のチャンスを逃すと、3Rはサンドバッグ状態でハーディのパンチを浴び続けたが、ダウンせずに耐え抜いた。
 目を腫らし、鼻血で呼吸がしにくくなり、体力切れの酸欠状態で、脳にも衝撃が大量に加わっただろうから、かなり危険な状態だっただろう。試合後、石毛は救急車で病院に運ばれた(その後無事退院したと聞く)。

 はっきり言って、1Rにもう1度ダウンして、パウンドを数発浴びてKO負けしていたほうが、同じ負けでもダメージは軽く済んだと思う。
 しかし石毛は体が動かなくても、最後の最後までKO負けを拒否し、勝ちへの執念を捨てなかった。
 パンクラスのベルトを肩に掛けて入場してきたことからもわかるように、チャンピオンとしての責任感と、この春で安定した教員の仕事を辞め、明日の見えない格闘技に賭けた覚悟があったからだろう。
 それは彼だけにとっての戦いじゃない。パンクラスで石毛の試合を見て来たファン、パンクラスのフロント、石毛とともにベルトを目指ししのぎを削り合った他の選手、そして教員を辞めたことで迷惑をかけた家族や他の教員や教え子の思いも背負った戦いだった。

 3R目の石毛の執念からは、そういう気持ちも感じ取ってはいたが、会場で取ったメモにも、試合レポートにも、僕は書かなかった。
 KO/一本決着を讃える傾向がこの業界には強いが、KO/一本を許さなかった敗者の、心技体の強さを軽視してはいけない。KO/一本決着だから良し、判定決着だから悪し、という二分法はナンセンスだ。問題は質だ。質の低いKO勝ちもあれば、質の高い判定負けもある。

 僕もこの仕事を7年やって、いろんな勝ち負けのケースを見て来た。
 そういう他の人が見逃したり軽視しがちな大事なことも、もっとたくさん書いていかないといけない時期に差し掛かってきたのではと、いろんな事情があって最近感じるようになった。(前にもそういうことを書いた気がするが、特に今はそれを痛感している)
 以前なら自分の経験や立場で書くのはおこがましい気がしていたし、今も迷いはあるが、もう腹をくくってやってしまったほうがいいのかもしれない。
 いきなり大きな一歩を踏み出すのは大変だし危ないから、1ミリだけでいいから前に出る。あるいはいきなり大きな一発を狙うのじゃなく、まずはジャブを出す。今回のこの文章はジャブになっただろうか。
 海賊版で今回石毛に関して書いた文章では、まだまだ読者に訴える力が足りない。自己満足的なオヤジの説教で終わってはいけない。ちゃんとしたエンターテイメントにならないと、現状を変える力にはならない。お笑いとか奇をてらった事をやるという意味では無く。
2007-06-01 11:09 この記事だけ表示   |  コメント 4
元TM、じゃなく、元SM嬢ということで話題になった5/19のスマックの無差別級トーナメント優勝者、HIROKO選手。誌面で使わなかった写真を海賊版に掲載します。

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1枚目。豪快なサッカーボールキック。ボディを蹴っているだけなんですが、この巨体で蹴ると、他の女子選手に全く無い迫力があります。猪木アリだとすぐブレイクがかかる傾向が強いけど、ボディへの踏み付けだけでも、使いようによってはKOを狙えるんじゃないかと思いました。

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2枚目。和田レフェリーと対比する事で、HIROKO選手のデカさがおわかりいただけると思います。勝った後、ピョンピョン飛び跳ねて、体全体で喜びを表現する姿が、試合とギャップがあってなかなかかわいらしかったです。

本庄君も記事で言及していましたが、この日、膝蹴りを多様しており、これをもっと首相撲を身につけてバンバン打てるようになれば、かつてのセーム・シュルトのように無敵だろうなあと思いました。

アメリカ最大手の格闘技ウェブサイト、シャードッグも取材に来ていました。最近小さな大会にも熱心に足を運んでますね。記事を見ると、元SM嬢だということも言及されており、彼らの博識(?)に驚かされます。SM嬢は「dominatrix」と言うらしい。なんかカッコいい英語です。
2007-05-29 11:00 この記事だけ表示   |  コメント 4
 
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