■4.22は、スマックガールの取材で午後に大阪入り。なんだかんだあって、16時ちょっと過ぎに大正駅に着く。うえー、遅刻だ。会場はさらにバスで10分程度の場所にあり、歩いて行く距離じゃないらしい。小雨もぽつぽつ降り始めていて、焦る気分に拍車がかかる。だが肝心の駅前のバス停が記憶と違って見当たらない。
 タクシー使うかなー? と覚悟しかけたら、そこにあっさり予定のバスが来合わせて、目の前に止まる。あわててたんで、目の前にバス停があったのがわからなかったらしい。車内でも気分は駆け足。目的地の停留所で降りて、大慌てで会場に駆け込もうとしたのだが、会場前ではなんかまだ贈呈の花輪が搬入されてたりして気配が違う。あれ、まだ開場してないじゃん??
 なんと、ワタクシ開始時間を二時間間違って記憶していたのでございました。結局、まだルールミーティングが行われている最中に会場入り。たっぷり待ち時間を潰すハメになってしまった。(この日はどうしてもスケジュールの都合が付かず。同じ会場で昼から開催されていた「OYAZI BATTLE」は泣く泣くパス。何となくあった焦りの気分が、そのまま“開始時間に遅れる”という強迫観念に化けてしまっていたのかもしれない。)


人呼んで「マル坊ブラザース」
■周囲に喫茶店も見当たらない事もあって、待ち時間の間、リングサイドに陣取っていたレフェリーの和田良覚さんに遊んでもらう。この日の話題は、スキンヘッダー同士の、頭剃り事情の情報交換。この世界に入ってまだ一年足らずの若輩の僕とは違って、和田さんは既にこの道十年の超ベテランであり、剃り上げの道具一つにもこだわりがある。
 
和田「井田さん、剃刀は何使ってます? 三枚刃?四枚刃?」
井田「えーと、どこだったっけな? ミルコが宣伝してる奴だったんじゃないかなあ。あれ凄い剃れますよ。うっかりしてると頭の皮まで切っちゃうぐらい」
和田「アゴのヒゲはそれでいいんだけど、頭は×××の三枚刃ですよ。刃の所が曲がって、頭のカーブにフィットする奴。ビヨンって曲がるんです。あれが一番です。試してください」

 そこに頭の不安はまるでなさそうな梅木レフェリーも参入。
梅木「でも男性性の脱毛は完全に治るって飲み薬が出てるの知ってます? TVでもガンガンCM始めてますよ。普通のお医者さんで貰えるんですって。あれ、和田さん、絶対効きますよ」
和田「あー、僕男性ホルモン百人に一人ってぐらい多いらしいんですよね。頭もそれで剃ってるし、体毛は逆に濃くて。そんなにすごーく鍛えなくてもこの身体ですから」
井田「要するに百人に一人ってぐらいスケベなんですね」
和田「サイズは大した事ないんですけどねー」

 ハゲオヤジ同士の怪しい会話に、バンデージチェックに来る女性選手の視線が、心無しか冷たかったような気もしますが…平気っすよね、先輩。


■ちなみに入場式では、こんな光景を発見。

 とあるルーキー選手の足元。確かに試合は裸足だし、普段の靴を履いてリングに上がるのも躊躇われた模様で、この選択となったんでしょうな。よく見ると、踵の端っちょはちゃんと引っ掛かるようになってるので凄く具合がいい感じ。色もピンクで女の子らしいし、ふかふかの素材で温かそうです。プロデビュー戦でそんな所まで神経が行き届くとはなかなか準備万端。

 実際、すぐ脱げるって事で会場でのスリッパ愛好者は実は多いんですが、大抵はリング下で脱ぐもんでして、そのままリングに上がっちゃった人もあんまり居なかったような(笑)。

 なかなか光景として味があったので、暴露してみました(笑)。

 

2006-04-24 03:21 この記事だけ表示

 インタビューというのは、この稼業をやっている限り、どうしても避けられない大事な仕事である。記者会見はもちろん、マンツーマンで相手の心理の動きを読みながら、言葉という道具で“言葉無き現場=リング”での行動を解き明かして行く作業は、ミュージシャンでいえば「ライブ」にあたる作業。結構、同業者の中には、これが苦痛だと言う人も居るようだが。しかし、人様の事情を堂々と詮索できるなんて、探偵かインタビュアーぐらいのもの。中学時代、将来なりたい職業に「探偵」と答えていた僕は、もちろんインタビュー大好きである。

 だが、時に相手の心理の機微を計り損ねてしまって、どうにも気まずいやりとりになってしまうこともある。選手も人気商売なので、なんでも正直にしゃべってくれるわけではない。むしろセルフイメージを守るために、鎧兜を着込んでいるぐらいに考えたほうがいい。だからといって、こっちも媚びたイージーな質問ばかり並べていても仕方がない。嫌がられようが、憎まれようが、必要な時にはその鎧の隙間に刀をねじ込むような質問も投げねばならない。

 例えば2日のPRIDE武士道の会場で敗戦直後の五味隆典に「敗因は単なる疲れですか? それとも慢心ですか」と傷口を岩塩の塊でゴリゴリに擦り上げるような質問をしてみたのだが、これなどは質問者と選手の真剣勝負。乾坤一擲の一問一答だ。プロ意識の高い五味だったからこそ、強がりの鎧を脱ぎ捨てて虚心坦懐に答えてくれたわけだが、「ノーコメント」で席を立たれていても不思議は無い。やはりそんなヤバ目の質問を口にする瞬間は、心臓が飛び出しそうになるほど緊張するし、きちんとした答えが返って来なかったときなどは、かなり落ち込む。まあそう言う経験をいくつも積み重ねて、今日のタチの悪いインタビュアーとしてのワタクシがここに居る訳なのだが。

 しかし、先日のK-1 MAX開幕戦の前日会見で、なんと出場14人の選手全員に「ノーコメント」という答えを返されたのには、さすがに閉口した。

 質疑応答になってもあまり気の効いた質問が出ず、しらけ気味の会見だったこともあって、「決勝では誰と闘いたいですか?」なんて、あまり実の無いお決まりの質問を投げてしまったのが何より悪いのだが。まあ14人も居るのだから、何人かは印象に残るコメントをしてくれるだろうという甘い期待があったのも事実。

 ところが、一番手に昨年のチャンプであるアンディ・サワーが、「具体的に誰と言うのは差し控えさせていただきます」なんて謙虚な事を言い出したものだから、どの選手も跳ね上がった事が言えなくなってしまい、みんなハンで押したように「具体的な名前は言えません」「誰でも構いません」のオンパレードになってしまった。フライングであろうが、なんであろうがせめて自分のライバルの名前を挙げる覇気があってもいいんじゃないの? とは思ったが、どうにも一回始まった雪崩は止めようがない。

 さすがに延々十数人が似たような事を口々に積んで行ったわけだから、しらけた会場はさらにシラけかえる。きっかけを作ってしまった張本人としては、逃げ出したいような気分だったが、全員のコメントが終わるまではこの責め苦に耐えるしかないのであった。

 ようやく10人目にしてヴァージル・カラコダが、「誰が優勝するかはわからないけど、とりあえずブアカーオが決勝に残っていることは間違えないね」とスペシャルに冴えたコメントを吐いてくれた時には、やっと救われた気分になった。無論、自分と闘うであろう相手を言ってくれなかったという意味では、彼もノーコメント組の一人な訳だが、その後の躱し方というか、同じ事を言うのでもユーモアで包んで返すセンスが違う。

 ブアカーオは、翌日の彼の対戦者なのだから、その名前を挙げるということは「俺は明日負けると思うよ」と言っていることになる。当然、記者団も大笑いしたし、そこまでのちょっと煮詰まった空気が、一気に解消されたのは言うまでもない。彼の前の10人が吐いた、生真面目一本のカチンコチンなコメントの百万光年彼方を行く余裕ではないか。

 いや、もうこの一言でヴァージルには惚れたね(笑)。

 会見終了後、たまたま廊下で一緒になったヴァージルに握手を求めて「ナイスなコメントをありがとう」と感謝の意を表明したら、「でも決勝は僕とブアカーオだぜ」とウィンクしてさらにシュールなコメントをくれたので、いよいよ好感度がアップしてしまった。



 さて、翌日の試合では、掴みに対する基準の厳しくなったせいもあって、“ヴァージルイチ押し”のブアカーオが苦戦。延長ラウンドでは、元ボクサーであるヴァージルとパンチで打ち合ってしまう展開に。最終的に判定勝ちこそ納めたものの、大会後谷川プロデューサーに「あれはヴァージルの勝ちだと思う」とまで言われてしまった。

 これを受けて、ヴァージルには“主催者推薦”という救済措置が発動され、ブアカーオと揃ってのベスト8進出が決定した。なんと彼自身が冗談で語った「カラコダvsブアカーオ」の決勝実現も、まんざら夢ではない展開になってきたのである。

 まったく、これだからインタビュアーはやめられない。

2006-04-15 06:30 この記事だけ表示

 アレックスと“遭遇”したのは、2003年の6月のことだった。

 当時、多摩の永山には知るヒトぞ知ると言った感じで、カラオケボックス跡地のコンクリート打ちっぱなしの会場に、手作りのリングを設置した200人規模のZ-ZONEという会場があった。カルト格闘家入江秀忠率いるキングダム・エルガイツの道場兼試合会場が、このZ-ZONEだったのである。

 このころ中央マスコミが一切相手にしなかったこの団体を、僕らは「Justiceマネージメント」の最初の顧客として抱えたばかりだった。(後に2004年韓国で開催されたGLADIATORを期に契約解消)

 初代アマチュア修斗のヘビー級王者という肩書きを持ち、大相撲上がりの重い腰を武器に、グラウンドではめっぽう強いとアングラシーンではその実力を知られていた入江だが、人間関係はからきしダメで、行く先々のジムとけんか別れを繰り返して来た結果、もう何処のプロモーターも彼を使おうとしないという状況に陥っていた。格闘技界で八方ふさがりに陥った彼が流れ着いた先は、UWFの末裔キングダム。しかし、彼と入れ違いになるように桜庭、金原、山本(喧一)らスター選手が離脱して行き、喧嘩をする相手も居ないと言う有様。結局、その看板を一人背負う事にして、細々と北沢タウンホールなどで、UWFスタイルのプロレスマッチを自主興行で行うようになる。

 だが、そのアンダーカードではガチンコでのキングダムルールマッチが繰り広げられ、確実に若い実力者が育ちつつあった。今をときめく足関十段・今成正和や、海外での柔術修行を終えて帰ったばかりの稲野岳、九州でのオーディションで発掘された鬼木貴典ら、荒削りだがそれぞれに可能性を感じさせる新人が、入江の下には集まりつつあった。マネージメント業の付け目としては、彼らと入江をセットにしてDEEPやパンクラスに上げて行こうという考えだったのだが、このコラボレーションが始まるか始まらないかというタイミングで、今成を始めとする若手選手がごっそり離脱してしまう“事件”が勃発してしまい、このプランはあっさり座礁してしまった。当面入江は新しい選手育成とZ-ZONEでの大会開催に専念することになる。

 そんな閉塞状況に、彗星のように現れたのがアレックスだった。
 「面白い選手が出るから、一回見にきて欲しい」と力説する入江の熱意に負けて、えっちらおっちら一時間以上掛けて多摩の山奥に出かけた僕は、そこででとんでもない光景に出会う。

 Z-ZONEは前述した通り、入江がDIYの材料でコツコツ仕上げた会場で、天井も低く照明も暗い。したがって、リングも床に直づけとなり選手はほとんど選手と同じ視線の高さで試合を見る事になる。選手もほとんど素人に近い人が多く、半分以上がアマチュアマッチと銘打たれて、出場料を払った上でリングに上がっている状態だった。全ての意味で“等身大”の大会であり、ただ至近距離でリアルな戦いが繰り広げられる迫力だけが売りだった。

 しかし、そんなショボ目の大会の空気を、一人で塗り替えてしまうような選手が居た。第三試合のコールで、本来ガーデニングでバラを巻き付けるために作られた白い貧相な鉄骨のゲートを、前屈みに潜って来た大男は、観客の目線はもちろん、対戦選手の視線をも遥かに見下ろす巨体の持ち主だったのである。

 PRE PRIDE優勝の実績を持ち、当時、キングダムがヘビー級選手として育てようとしていた対戦相手の高野圓真(現/濱田順平)を、突き蹴りだけの基本技で翻弄するアレックスのダイナミックな戦いぶりを見て、僕は一発で彼に惚れ込んでしまった。

 また、千葉の大網という九十九里の端で営まれている空柔拳会館は、まだ一人のプロ選手も持たず中央の格闘技界には全くルートを持たずにやってきた道場であり、僕らの考えているビジネスにはぴったりの存在だった。

 大会直後に土田館長にプロ活動を前提としたマネージメント活動を申し入れ、以来三年近くになる長いつきあいが、この日始まったのだった。

(つづく)

2006-04-01 14:57 この記事だけ表示

 先日のRISE『G-BAZOOKA トーナメント06』は、アレックス・ロバーツが強烈な膝とミドルでKOオンパレードを繰り広げ、優勝を飾った。わがMuscle Brain's(ばうれびの運営会社)のマネージメントセクション「Justiceマネージメント」で、彼のブッキング業務を担当してきたので、今回ようやくポテンシャルを最大限発揮できたこの結果を素直に喜びたい。

 媒体と選手ブッキングは共に独立したビジネス、と思い定めて始めた業務であるが、時に利害が重なる部分もあり、僕らとしてもその両立を神経質すぎるぐらいにデリケートに考えてやってきた。自前の選手の評価は出来る限り控えめに。そして敗北には厳しく筆を進めるように自戒してきたが、逆に「媒体の足かせが無ければもっとこの選手を大胆に売り出してやれるのではないか」と葛藤し、煩悶することも多かった。(あえてマネージメントとしてのネーミングに「正義」を高らかに謳っているのは、最低限のバランスは踏み外すなよ、という自戒を込めてのものでもある。)

 最近でこそ素直に選手の良い部分は褒め、プロモーション部分は選手の利益とファンのニーズが噛み合えばあまり神経質にならずにやっていこうと考えるようになったが、そのバランスをちゃんと見定めるのはやはり苦難のワザ。これからもあれこれ試しながらやって行く事になるだろうと思う。

 こうしたビジネススタイルは既に海外では「Full Contact Fighter」がフィル・バローニを、あるいは「Sherdog」がレナート・ババルをマネージメントして売り出してきたという先鞭がある。彼らに出来て、僕らに出来ないと言う理屈は無い。また単に選手をイベントに口入れするだけではなく、僕らが取材を通して築いたネットワークを使ってトレーニング環境を整えたり、選手の客観的ポジションをマーケティングし、ファンにより有効にアピールするアイディアやマッチメイクを立案したり、あるいはプロモーターと対等に話をして行くといった部分を全て受け持つ。したがってジャーナル部門を持っている組織であれば、業界内部の情報もつかめるし、より有効に仕事を進める事が出来る。日本でもなかなか自分たちだけでは売り出していけないローカルの選手を中心に、チャンスを作って行くことは可能なはず。とはいうものの、例によって資本もノウハウも何も無い所から、たった一つの確信だけを携えての手探りで始めたビジネスだった。

 スタートから二年余、ようやくベルトを巻く選手を生み出す事も出来たわけで、やっとその仕事内容をみなさんにもご報告してもいいだろうと思えるようになった。(正確にはもう既に一名チャンピオンが居るのだが、契約上専属契約選手とは言い難いので、今回のアレックスの戴冠を“Justice 最初のチャンピオン誕生”と考えたい。)そう遠くない時期にJusticeマネージメント単体のHPも公開して、今我々が何をやっているか、そして今後何を目指すのかもきちんと判っていただける形にしたいと思う。

 本来はもっと早くこういう形に持って来たかったのだが、リングの上できちんとした結果も出なかったので、なかなかそのタイミングが掴めなかったのもある。その間、業界からの抵抗やバッシングも多く、何回放り出してやろうかと思った事か(そのエピソードを書き出したら、本一冊では納まらないかもしれない)。ただ、一方で陰ひなたに応援してくださった方も多く、やっと一つそのご恩に報いる事ができたのではないかと思う。


 優勝セレモニーでは、さっそくアレックスに「全面攻撃型巨神兵」なるキャッチフレーズが付けられた。これにはちょっと微笑ってしまった。確かに194センチの身長とパワーを持ちながら、あのスピードで動けるバランスの良い身体を見れば“巨神兵”なんて呼びたくなるのはわかるが、見かけによらず非常に繊細なメンタルを持つ彼は、むしろ“虚心兵”と呼びたくなるぐらいセンシティブな選手であり--「思い上がる」のがなにより下手だったからだ。

 彼のプロデビューは2004年2月のパンクラス後楽園大会。当時日本に格闘技留学にやって来ていた韓国人選手ハン・スー・ジンとの対戦。格闘技のために日本に留まった同じ立場の人間の対戦だった。押さえ込んだ時に下からカマされた頭突きで鼻を折られ(いわゆる“チョーパン”というやつだ)意識が飛んでしまい、試合らしい試合をさせてもらえず、レフェリーストップによるTKO負け。

 ただこの日、僕は入場して来た時から、彼の表情にヤバいなという影を見ていた。テーマソングが鳴って花道を歩いて来ても、まだ頭の中に雑念が残ってしまっているような、コンセントレーションを欠いた表情のままリングに向かってきていたのである。こういう表情を見せている選手は大抵負ける。

 その後も、この癖はなかなか治らずリングサイドで写真を撮っていてもハラハラしてしまう事がしばしばだった。彼のパワーをそのまま相手にぶつけてしまえば、勝負はすぐつくはずなのに、何か心ここにあらずと言った風情で相手の先手を許し、隙を突かれてころっと負けるパターンの試合が続いたからだ。

 善くも悪くも常識人の彼は、リングの上の“非日常”状況で、自分を解放するというやり方が判らなかったのかもしれない。

 趣味はおとなしく、映画と音楽と読書。日本滞在五年足らずにもかかわらず言葉が異様に堪能なのは、親の仕事の都合で、少年時代から世界を転々とした経験からだろう。仕事も小学生相手に英語を教えるという補助教員をやっている。生活も慎ましやかで、無駄遣いもほとんどしない。車は中古車。学校と練習場所とアパートの三角点移動だけを日常にしていて、六本木で女遊びなんかとんでもない。千葉県の端っこ、九十九里浜にほど近い大網の街で、のんびり暮らすのが性にあっている。誰からも愛され、流暢な日本語でアマチュア選手ともフランクにジョークを言い合うナイスガイ。それがアレックスだった。

 人一倍恵まれた肉体を持ち、その上に練習一筋の彼が、本来の実力を発揮すれば、あっという間に王座まで駆け上るだろう。そう踏んでいた僕らにとって、アレックスのプロ戦績が伸びない事は、あまりにも謎であった。出稽古に行けば、スター選手だって舌を巻くようなポテンシャルを見せつけるし、アマチュア時代の映像を見たって、相手をガンガン吹き飛ばすとんでもないパワーを持っていることは証明済みなのだ。一体、彼の行く手を阻んでいるのはなんだろう。

 僕らマネージメント側も漫然と手をこまねいている訳にはいかない。
 二人三脚の苦悩の日々が続いた。

(続く)

2006-03-28 16:06 この記事だけ表示

19日のパンクラス大阪大会は、前田吉朗が“世界一弱腰な格闘家”DJTaikiに敗れる波乱もあり、わざわざ大阪まで行った甲斐のある大会だった。長年、P's LAB大阪という常設ジムを置いて、この土地に種を蒔いて来たパンクラスの姿勢が実りつつあるということかもしれない。動員もよく、会場には熱気があった。「リアルリズム」という地元イベントも好調であり、ようやく大阪も“格闘技不毛の地”という状況から脱しつつあるのかもしれない。


“Uが匂う”足関の攻防。

その息吹を感じたのが、この大会の前半“パンクラス・ゲート”の枠で行われた「P's LAB大阪vsコブラ会」の対抗戦三番勝負。記事では大きく取り上げなかったが、新人達の稚拙ながらも必死な戦いぶりが、非常に楽しかった。この感じは、ゲート戦で着用を義務づけられているキックレガースが、かつてのU系団体の第一試合によく組まれていた新人マッチを思い出させてくれるからかもしれない。

第二期UWFの垣原vs冨宅戦や、パンクラスの長谷川vs山宮戦なんかがふっと頭をよぎる。ドタバタした、技術も何も無い勢いだけのぶつかり合い。まだ素人に毛が生えたような、坊主頭の若手のお披露目のような前座試合を、ファンがなんと暖かく見守っていた事か。(今回ジム関係者が客席に多かったこともあって、客席の温度が非常にそれに近かったのもあるだろう。)UWFの“終着の浜辺”でもあるパンクラスのリングで、今こういう風景が現出することに、なんともいえない感慨があった。

特に三番勝負のトップを切って登場した江崎賢二(P's LAB大阪)とパンチィー山内(コブラ会)の二人が揃って、まるで新弟子上がりですといった風のボウズ頭にガリガリの体つきだったりしたものだから、特にその感が強くなったのかもしれない。

パンチをブンブン振り回し、必死にタックルを仕掛け、ゴロゴロ関節を取り合ってグラウンドを転がり回る。どっちも詰めが甘く、気持ちだけでお腹いっぱい。すぐ息が上がってしまい、ゼイゼイ肩で息をしながら、それでも諦めずにアタックを繰りかえす。

なんかその様子が可愛らしいのだね(笑
こっちが年をとっただけの事かもしれないのだが。



一方で、ゲートの第四試合に上がった鳥生将大(P's LAB大阪)のように、既にすっかり出来上がった身体で記者陣が、一斉に色めき立つような選手も混じっていたり。

ハイキック一発の五秒KOという結果は、逆に実力の程が読めないものにしてしまった感もあるが、2月に大阪で行われた「リアルリズム」のファームにあたる「RR(ダブル・アール)」でもメインを務めており、この時はコブラ会の篠崎選手に1R 4分08秒TKO勝利を納めている。今回の国本選手もコブラ会所属なので、リングネームに“マングース”と入れた方がいいかもしれない(笑)。


出てくるなり、リングサイドが唸った僧帽筋

177cm 84kg、色の白い桜井隆多と言う感じ。22歳でこの春大卒らしいのだが、就職はまだ決まっていないとのことなので、もしかしたらこのままプロ選手としてどんどん試合をこなしていくかもしれない。青田買いの好きな皆さんは、ちょっと注目してもいいかも。

フィニッシュはあまりドンピシャなタイミングでKOシーンが撮れたので、ゲート戦には異例な感じで記事に写真だけ載せたのだが、いやー、あんな綺麗なハイキック勝利なんか、多分高田vs北尾以来でしょう(笑)。

やっぱりUWFが匂うなあ。春だから?(意味無し)

2006-03-21 00:07 この記事だけ表示

年初からインフルエンザでダウン。そのまま気管支炎でお籠り状態となり、最近ようやく現場復帰(に近い状態)にこぎ着けた井田ですが、ブランクが長過ぎたせいで仕事が今年の新潟の積雪みたいになっちゃってまして、何から手をつけたもんか途方に暮れております。普段はそんな井田の除雪車がわりになってくれる井原くんが、昨日は親族の法要で田舎に帰っちゃいまして、否応無しに記者会見に駆り出される日曜日でありました。

ネタは石澤常光のHero's緊急参戦。日曜だというのに、記者の集まりがよかったのは、やはりプロレス絡みの話だったからでしょうな。会場動員ではすっかり、格闘技とプロレスが逆転したと言われる昨今なのではありますが、やっぱりポピュラリティで、まだまだプロレスに一歩譲る形になっちゃうんだなあ、とこういう時に実感する。(さすがに悔しいとまでは思わないんだけれども、格闘技サイドの人間としては、やっぱりなんか複雑。)

それを象徴してたのが、やはり石澤のマスク姿とコメント。

これまでの格闘技戦でも、彼はずーっとノーマスクの石澤名義を通して来ているんで、今回だってそのスタイルを踏襲するであろうことはほぼ九割九分堅いところ。でも会見にはサービス精神でか、それとも彼のトリッキーなキャラ故か、おなじみ“カシン様”のマスク姿で現れるから、やっぱり記者の質問は「マスクで闘うんですか?」って話に行ってしまう。

プロとして自分に注目を集めれば、まず“第0ラウンド”は勝利。
ワザとHero'sをROMANEXと言い間違えたり、猪木事務所離脱で動向が注目されてる藤田和之のネタを覗かせたり、とにかく記者の喜びそうな切り口を次々に投げて、記事が自分色に染まるように操作して行くんですな。いや、ホントその意味で徹底した“プロイズム”を感じましたね。競技一筋の“純粋格闘家”が注目を浴びだして、中途半端なリップサービスとかをやりだすと、ワザとらしくて見られないものになっちゃうもんですが。その点、バンプが骨身に染み付いてる人は、もうキャラだとか、演技のレベルじゃなくて、徹底して“その世界を生きちゃってる”感じがして、ケチの付けようが無くなってくる。

その意味ではすっかり対戦相手の秋山は話題を「食われた」形になっちゃったんだけど、アマチュア時代が長かったせいか、そこにジェラシーとかが全く感じられなかったのが面白かった。

石澤が、プロレス記事も兼務する夕刊紙/スポーツ紙系の記者達相手に「入場曲に“男の勲章”は使わない」「中西と永田は冷たいから、勝手にチームジャパンを辞めてしまった。残ったのは藤田だけ」「試合の最後は敬礼する」みたいな“漫談”に興じてる姿を、いかにも面白そーに見てるんですな。

「あー、これがプロレスの世界かぁ」みたいな表情でして、まるで3日後に試合する相手という感じで見てない。すぐ真横で見てるのに距離が遠いというか、まるでヒト事な感じ。コメントでも「マスクをして会見に来た人を見たのは初めてなんで、表情が読めない」みたいな事を言ってましたが、実際寄り添ってのツーショットでも、しみじみマスク姿の石澤に見入ってたりして、“柔道家”秋山的にとってマスクマンという存在は、よほど珍しかった模様(笑)

例えば年末の「Dynamite!!」の前ウチ会見なんかだと、須藤が例の仙人ライクな“漫談”をやりだすと、ベルトを挟んで隣に座っているKIDの眉の上辺りに“緊迫感”が凝集したような何とも言えない空気感が漂いだして、それはそれは見ていてハラハラしたもんですが(笑)。それと比べると、今日の石澤と秋山のツーショットは、まるで対照的な平和的なものでありました。

この空気感が試合の時にどう影響するのか、ちょっと見物ではありますが。

でもこの試合、ホントのテーマは、奇しくも石澤が皮肉っぽく言った「オリンピックに行けなかった同士の戦い」ーー柔道とアマレスで、それぞれオリンピック候補まで行ったアスリートの「異種グラップリング合戦」の趣がある対決。プロレスファン大喜びのこのカードではありますが、格闘技ファンには是非表面的なギミック(マスク)を外して、競技的に楽しんでいただきたいと、願ってやまないのであります。

2006-03-13 08:39 この記事だけ表示


■大晦日と言えば、お祭りマッチの寄せ集めのように思ってしまいがちだけども、今回の「Dynamite!!」は、例年に比して後味すっきりの“格闘技の大会”でまとまっていた感あり。2003年のサップ戦以来、“失笑系”のトップを走り続けた曙の試合ですら、“最強の初心者”ボビー君という好敵手を得て(笑)それなりに流れのあるモノになっていたし。

■谷川Pはこの大会のMVPとして武蔵の名前を挙げていたし、所の大奮闘は多分視聴率にもかなり貢献したはず。しかし、あえて大会のボトムアップという意味で、ボンヤスキーの顔見せ消化試合になるはずだった第5 試合を、思いっきり盛り上げたプレデター君にMVPをあげたい。

 ブルーザー・ブロディーのコピーレスラーでしかない彼が、下手すればサップより「キックボクシングになっている」試合を見せてくれたのは超誤算だった。複雑な技術はもちろんないんだけども、いつ練習したのかワンツーやローの基本コンビネーションはできてたし、とにかくボンヤスキーというトップファイターを相手にまったく下がらないのが良かった。それだけで、いっくら練習してもへっぴり腰が治らないサップより上(笑)。今回から現場復帰してくれた“関西特派員”の山口龍師匠(キックのスペシャリスト)も感心しきりだった。

 ジャッジの下した判定は2-1のスプリットディシジョン。プレデターに一票を投じたのは岡林レフェリー。手数、プレッシャーだけを言えば、プレデターのゲームと評すのもアリ。あれでローのカットがちゃんと出来れば、GP予選で一つ二つ勝ってもおかしくない。
 
 今回はボンヤスキーの方も不調だったらしい。GP後、師匠のアンドレ・マナートと難しい関係になってしまったらしく、武蔵のボクシングコーチであるフランク・ライルズにセコンドを依頼。大会一週間前の緊急参戦だったので窮余の策だったらしいが、それでマトモな試合をやれと言う方が無理だったのかも。左足の怪我もまだ完治してないようだったし。三連覇を取り落とした事で、俄に周辺がざわついてしまっているようだ。ファイターの浮沈というのは、案外こういうちょっとした不協和音から始まる。チャクリキを離れて低迷期に入ってしまったアーツの二の舞にならなきゃいいが。

 ともあれ、K-1二連覇を果たした若きフライングダッチマンが、アメリカのマイナープロレスラーに敗れたりしていたら、2005年最後にして、トップ10クラスの大事件になってしまうところだった。(谷川Pは「プレデターの勝ちでもおかしくないと思ったけどなぁ〜」と大会後に散々愚痴ってたんで、“事件”になった方がうれしかったのか…(笑))

■そういえばこの大会、TVでは放映されなかったみたいだけど、もっととんでもない“事件”が勃発していた。

 第三試合に登場したヒース・ヒーリング君が、その主人公。

 試合開始の前にリング中央でレフェリーのチェックの際に、テンション上がった選手同士が顔を押し付け合ってガンの飛ばし合いってやるよね? 対戦相手の中尾もその伝で至近距離まで顔を寄せ合ったんだけど、余裕噛ましたつもりか、いきなりそこでチューしちゃったんですな(笑)。

 ムカついたヒーリングは、右のショートフック一閃。実際そんなフルスイングの一発じゃなかったんで、『ざけんな、オラッ』ぐらいの軽い小突きだったはず。でも、綺麗にアゴに入ったこの一発で中尾は頭が揺れちゃったらしく、両足揃えて、大の字ならぬ「I」の字になってダウン。殴ったヒーリングもさすがにビビっただろうなー(笑) 


 
 ルール上、反則負けにされちゃったけど、これは中尾が絶対悪い。何が悪いって、キスがじゃなく、ノされちゃったことが悪い(笑)。 

 結構試合前のガン付けパフォーマンスなんかは、格闘技界では日常茶飯事。そのヴァリエーションで、キスってのも結構ある話。確かベルナルドとかセフォ−が同じシーンでやった例があるはず(思い違いだったらゴメン)。でも、それって『まあ、熱くなんなよ』ぐらいの、お互いもうちょい信頼感のある相手にやる話だし、初戦の相手に通じるシャレじゃない。レイなんかはストリートで百戦錬磨を繰り返して来た強者。いざ殴り掛かられても、切り返す自信があるから、そんなお茶目なマネもできるわけで。試合前のテンパった状態でのキスなんてのは、ガン付けよりさらに上の挑発なわけで、相手がヒートして“一発食らわされるかも”ぐらいの覚悟はなきゃダメでしょ。

 「試合中は常在戦場の覚悟でないと。レフェリーがブレイクって言っても、実際に身体を離すまで何をされるかわからんやろ。はいそうですかって身体の力抜いた途端、関節締め上げてくる奴、サミングしてくる奴なんぼでもおるよ。相手は勝ちたくて必死なんだから、非常事態に自分の身は自分で守るのが当然」と、これは他ならぬHERO'Sスーパーバイザーの前田日明のリングス時代のお言葉。

 その人が仕切るリングで喧嘩売っておいて、非道な返し食って延ばされました、ではちょっとステゴロ失格ですなぁ。個人的には、この試合…いやこの喧嘩は「中尾の負け」。あっさり再戦とかさせないで欲しい(因縁大好きの谷川Pの事なんで、話題が冷えないうちにやっちゃおうとするだろうけど(笑))。

 しかし、テキサスの無骨なホースマンにとって、オトコからのキスなんて絶対許せなかったんだろうなあ…喧嘩は民族性も考えて売りましょう。

■実は事件はこれに留まらず。

 花道を下がっていったヒーリングを、中尾サイドのシンパとおぼしき一団が襲撃。組み敷いてシバいてしまった(らしい)。すぐセキュリティの人間が分けちゃったんで『大乱闘』という所まではいかなかった(らしい)けど。

 (らしい)を連発してるのは、そのころ僕はインタビュールームにいて、その騒動は直接目撃しなかったから。ただ、事件の真横にシャードック(アメリカの有力格闘技サイト←広告が多くて羨ましい)の日本特派員マサ・福井が居て、その乱闘を目の当たりにしたそうな。彼も咄嗟のことに、思わず写真も撮らずに仲裁に入ったとか。したがって証拠写真も無いのがちょっと残念(笑)。ワタクシもいい加減この業界長いんで、二三回そういう場面には遭遇しましたが、んな急場に出くわしちゃうと、なかなか写真撮るまでのプロ根性は湧かないよね、判る判る(笑)。

 当のマサは「ヒーリングのセコンドの人が、ニーインザベリーで相手を押さえ込んでましたよ。すっげー、この人実戦でも“やってるよ”って拍手しそうになりましたー」とか呑気な事言ってましたが(笑)…ということで、アルティメットボクシングの路上戦闘理論はここで証明されました>佐山さん(笑)

■あと、同時開催ってことで、「男祭り」側のリアルタイム速報を毎試合毎試合携帯で送ってきた井原くん。あんた、コマメ過ぎ!(笑)。(IDA)

2006-01-02 05:41 この記事だけ表示

■e+サイトをご覧の皆様、初めまして。

格闘技専門サイトBoutreview(エイギョー的プロフィールはこんな感じ→)のスタッフが総出で、取材で拾ったよもやま話+αをお届けするBlogのスタートでございます。

名付けて「ばうれび海賊版〜Boutreview Bootleg」。
Bootleg”の意味は、リンク先をどうぞ。多分、密売酒の業者たちが履いていたボロいブーツなんかが語源だったりするのかもしれませんが、アタクシ、生憎そんな英語大魔王みたいなウンチクは存じません。

コアなロックファンにはおなじみの、『海賊版』からのイタダキです。まあ自前で“海賊版”を名乗るのも何ですが、エアロスミスなんかが“Ofiicial Bootleg”なんてアルバムを出してる“あの感覚”、LiveでRare、多少外れてもマンマで聞いてね、と。

■スポーツを取材してると、選手たちの何気ない一言や関係者のちょっとしたコメントなど、記事には反映できないエピソードに触れることがあります。煮ても焼いても“食えない”話も多々ありますが、捨ててしまうにはもったいない“ネタ”もございます。

時に建前に隠し損ねた一言に、“本筋”であるリングの光景を照らし出す絶好のヒントがある、と思う事もしばしば。そんな、“リング外のエキストラトラック”を集めた、「コンピレーションアルバム」の感覚でlogを重ねて参ります。

■オフビートなBootlegですから、オフィシャル日記系にありがちな、お世辞/社交辞令の羅列なんかもアレなんで、キツめのコメントや本音もこぼれますでしょう。時には格闘技と全く関係のない話も、ここではオッケーにさせていただきます。

ウチのクルーがなんかの拍子に暴走しましても、あくまでここは海賊版。ワタクシも(あんまり)責任は負いかねます。我々はデジタルがらみの業界に片足ツッ込んじゃいますが、気分は至ってアナログですんで、溝の間のノイズも音の内ってことで、諸事あしからず。

■良ければご愛読を。

(IDA)

2005-12-19 14:55 この記事だけ表示
 
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