がんじがらめ[井原芳徳]
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 格闘技通信の最新号は、8/25の全日本キックのKick Returnトーナメント開幕戦で梶原龍児と死闘を繰り広げた前田尚紀を大々的に取り上げていた。
 大会場での試合が誌面で優遇される中、2000人収容の後楽園での試合が、ちゃんと評価されていたことをうれしく思う。

 AJ☆JACKS!の前田尚紀伝説によると、前田は鹿児島の高校のボクシング部の部室で「四角いジャングル」のビデオを見て、藤原敏男の存在を知り、上京後、藤原ジムに入門したという。10年ちかく経った今も、前田は藤原ジムの二段ベットで寝起きし、練習とバイトの日々を送っている。

 そんな生活や普段の態度から、いつしか彼には“闘う修行僧”というニックネームがついた。しかし格通のロングインタビューで、前田は“修行僧”と呼ばれることを否定し、「ほかの人より自由だと思います」と言い切る。そのあとに続いた言葉が印象的だった。

「もう自分は28歳で、友達はだいたい会社員なんですよ。話を聞いたら、もうがんじがらめですよ、会社に。それに比べれば。それに比べればっていうか。逆に会社勤めなんかしたくないですよ」

 無欲なんじゃない。金や名誉よりも、好きで好きでたまなくなったキックボクシングにひたすら打ち込める環境が欲しい、ただそれだけだ。でも、普通の人たちは、本当に好きなことに集中する勇気が無い、あるいは、そもそも本当に好きなことが見つからないから、金や名誉や世間体を優先し、いつのまにかがんじがらめになる。

 僕はバウレビでの梶原戦のレポートを次のように結んだ。

「(前田は)ファイティングポーズもマイクも無く、足早にリングを後にした。ダメージの影響もあっただろうが、花のように何も飾らず、試合だけで全てを見せる『闘う修行僧』の純粋な美学に、心を打たれた」

 これを書いた時点で、僕は彼のその美学が、“修行僧”的な求道心が元になっていると思っていた。しかし前田のインタビューを読んだことで、実際はただひたすらキックボクシングが好きだから、花のように何も飾らない、ということがわかった。同じ見方だが、180度違う。僕の彼の見方も、がんじがらめになっていたようだ。


2007-09-14 19:27 この記事だけ表示   |  コメント 0

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