「キックの星 リターン」に願いを[井原芳徳]
 6月をもって、サムライTVの人気番組「キックの星」が全267回、5年3か月の歴史に幕を閉じた。
 サムライの7月の改変期に合わせ、修斗とDEEPとPRIDE武士道の各番組も終わり、格闘技系の単体番組で残ったのは、外部制作の「K-1バトルスクランブル」だけ。プロレス番組の「インディーのお仕事」は生き残った。毎日9時からのニュース番組のうち、土曜日の格闘技の日はそのまま残ったものの、格闘技の日が週1なのは変わらない。
 サムライTVの放送内での自社CMでも、大会中継枠を増やす方針を打ち出しているが、格闘技の7月の番組に関しては、そんなに増えたようには思えない。公式サイトを見ても、もっぱらアピールしているのはプロレス中継の方。全体として、プロレス優遇の路線がより強まった感は否めない。
 ここ1年でプロレス週刊誌(紙)は3つから1つに減った。週刊ゴングの元スタッフがようやく月刊誌をスタートさせるようだが、以前ほどのスケールでの売上はなかなか難しいところだろう。プロレスファンの数は減ったが、コアなファンの支持は根強く、サムライTVはそういった層を維持&拡大する路線を選んだと分析できる。
 格闘技専門誌は不定期の物も含め増加したが、1年先の行方は不透明だ。PRIDEの休止が続く中、格闘技人気というパイが、果たしてどれほどの大きさなのか計りきれないことも、「キックの星」終了の背景にあるのかもしれない。

 とはいえ、「キックの星」は、キックマニアだけでなく、プロレスや総合のファンの間でも評価の高い番組だった。特に「通信モノ」と言われる、選手がビデオカメラを持って毎日の練習や生活をセルフ撮影した映像を放映するシリーズは人気が高かった。
 選手が家族や友人といるときに見せるリラックスした姿、減量やハードな練習で苦しむ姿(試合前の選手はほぼ毎日体重計に乗り、その様子もビデオにおさめる)、計量直後に好きな食べ物をとても美味しそうに食べる姿、試合直前までのバックステージでの緊張しきった表情、そしてリング上でくっきりと分かれる明と暗。
 これらをありのままにさらけ出す通信モノの中でも、我龍真吾選手と須藤信充選手のシリーズの人気が高かった。二人が強烈な個性の持ち主だったことはもちろんだが、揃って初期は引退状態から這い上がる姿を追いかける内容だったこと、K-1 MAXを目標とし実際に日本トーナメント参戦に近づいた時期があったこと、減量が毎度毎度波乱の連続だったこと等も面白さの要因だろう。
 二人の通信モノはキックファンならずとも感情移入させるものがあり、通信を通じてファン層を広げることに成功した。2人の揃い踏みが当初発表された4月のR.I.S.E.後楽園大会のチケットは、本誌が過去取り扱った後楽園のチケットでもトップクラスの売れ行きだった。出場選手の誰か1人のサイン色紙を特典につけることにしたところ、須藤選手がぶっちぎりの1番人気だった。結局二人とも欠場してしまい、キャンセル処理も大変だったが、実券層にアピールする番組だったことを痛感させられた。新潟や鳥取や九州といった地方在住の方からのチケット注文の比率が高かったことにも驚かされた。

 今、日本のPRIDEをも飲み込んだアメリカのUFCバブルのきっかけは、「ジ・アルティメット・ファイター(TUF)」というリアリティショー番組だった。これも選手達の試合に向けての練習生活に密着するという点では「キックの星」の通信モノと共通するところがある。洋の東西を問わず、戦う者たちが自然に持つ生の輝きや、試合でシビアに審判の下される勝敗の残酷さといったノンフィクションは、平均的なクオリティのフィクションよりも強い感動を人々に与えるようだ。
 実際、キックボクシングは再ブームの波が来ている。「キックの星」がファン層を拡大したことも、いくつか挙げられる要因の一つとして数えられるだろう。キック再ブームの中心軸ともいえる全日本キックは10月、ついに代々木第二体育館に初進出する。大会の目玉になる肘有り60kgトーナメントを「Kick Return」と名付け、キックボクシングそのものをアピールする路線を打ち出している。
 そういったいい波が来かかっている中での「キックの星」の終了は、とても残念でならない。「キックの星」が終わっても、この番組でキックに興味を持った人は、興味を持ち続けて欲しいし、本誌もそんな人たちにこれからもキックを愛してもらえるような記事作りをしていかないといけないと強く感じている。もっとも、「Kick Return」にちなんでじゃないけど、「キックの星 リターン」の日が来てくれれば、これほどマスコミの側にとっても心強いものは無い。


2007-07-15 16:03 この記事だけ表示   |  コメント 3

コメント

、自分でもこれまで思いつきもしなかったようなフレーズでその選手を表現することで、ディレクターさんやデザイナーさんが意外なアイデアやデザインを返してきたりと、ジャムセッションのような化学反応が起こる楽しさもあります。シンガーソングライターがアイドルに詩や
(2012-04-05 16:52)
。「この選手の何が凄い?何が個性?」ということを、簡潔でいてインパクトの残る形で紹介しないといけないので、脳味噌の中でもい
(2012-04-05 16:55)
する文章は、これまでばうれびでも専門誌でも山ほど書きましたSだと、格闘技を全然知らないか、普段そんなに見ない人が対象です。選手やイベントの予備知識はゼロか
(2012-04-05 17:01)

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