急に神頼みしたって、神様は振り向いてくれない[井原芳徳]

 水谷秀樹選手が6月25日のR.I.S.E.のFLASH to CRUSHトーナメントで見事優勝を果たした。
 決勝まで3試合、いずれも3R目まで突入し、何度も危ない場面があったが、強靭な精神力と体力で乗り切った。試合後のブログを見ると、優勝後トイレに行ったら血尿が出たという。ボディに相当膝をもらっていたからだろう。それでも試合後は空手維新の児童や親御さんらに挨拶に行ったり、長時間のマスコミインタビューにも最後まできっちり答え、疲れた素振りは一瞬たりとも見せなかった。
 一回戦の試合後に休憩時も花道まで出て来て、花道沿いに100人近く来ていた応援団に挨拶をしていた。準決勝で相手が出血しドクターチェックが入った時、疲れているはずの水谷選手はコーナーで休むことなく、手を高く振り上げ観客を煽る。激励賞も多く、「ドイツ銀行協会」とかいう、とーってもセレブっぽい所の人からももらっていた。人脈が広く、いろんな人に愛され、そして自分のパワーにする能力に長けている。

 印象的だったのは、賞金100万円は大塚と大森で開講している空手維新の運営費に充て、「自分も空手維新も成長したい」という優勝後のコメントだった。ボランティア精神とか苦行とかそういう次元じゃない。周りが成長することで、自分も成長し、さらに周りも成長する。愛し愛されの相乗効果が、新しいパワーを生むことをわかっているから、自ら進んで賞金を道場に使うことができる。
 身近な例でいうなら、電車でお年寄りに席を譲った時、譲った側は立っていても不思議と疲れないのと似ているのかもしれない。お年寄りにお礼を言われてうれしくなり、譲った本人も「いいことをした」という充実感に浸り、気分が明るくなるからだろう。

 今も昔も私利私欲や即物的な利益ばかりを求める人たちが多いが、ここ最近は特にそういう人たちが増えてきているような気がする。ボランティアや慈善活動をやっても、その裏の功名心が透けて見えてしまう。急に神頼みしたって、神様は振り向いてくれない。戦いは数分でも、そこに至る練習や準備の過程も、全て戦いだ。ただ試合を見て結果や内容に一喜一憂するだけじゃなく、試合からそういう心を感じる人がもっと増えれば、この業界ももっと良くなる気がする。そしてそういうことを伝えて行く必要性と、なかなか伝えきれない現状について考えさせられた。



2006-06-28 14:39 この記事だけ表示
 
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