巨神兵の行方(3)[井田英登]

 行方は…ようやく決まりました。
 なんと、総合格闘技イベントと言う事で旗揚げしたはずのMARSの5/13(土)幕張メッセ大会でキック戦です。
 いやー、GWを挟んだ事もあって、この交渉にはいろいろ紆余曲折が発生。今回はホントにすっきり行かなかったなー。もうちょい早く決めてあげて、コンセントレーションを上げられるように持って行きたかったんだけど、雑音が多すぎて思うように行かなかったっすね。当人には、煮詰まってしまった分の怒りを、リングで爆発させてもらうしかないんだけど…。



 その“いろいろ”をいちいち書く気はないけれど、ブッキングというのはかくもややこしい物かと、改めて感じたのは事実。どの選手も負けたくないし、変な試合を組まれて、キャリアに穴が開くのはうれしくない。だから、リングに上がる前に、“前哨戦”が繰り広げられる。マッチメイクはもちろん、ルールや、ギャランティ、条件面に至るまで。選手が十全に実力を発揮できるように、ありとあらゆる面での交渉が繰りかえされて、ゴングが鳴るまでの煉瓦道を一個一個埋めて行かなければならないわけです。
 これがもう“Fighting”としか言い様の無い凌ぎ合いの連続でして、なかなかクリーンなKO劇は望めない神経戦。ホント「前座は辛いよ」みたいな泣き言の一つも言ってみたくなるんですな(セルフマネージメントの選手なんかは、この交渉を全部やって、それから練習も試合もしなきゃいけないわけで、リングにあがる前に神経が焼き切れてしまうのではないかと思ったりもするんだけど、みなさん平気ですか?(笑))。まあ、その露払いの為に、マネージャーなんて仕事があるわけで、当然の苦労と言えば当然なんですが。



 今回の試合で言えば、対戦相手のネイサン・コーベット選手は本来90kgアンダーの選手。100kg超のアレックスと試合をさせるのはあまり気が進まないんですが。僕自身、PRIDEの無差別トーナメントに賛成でない立ち位置(今、丁度All Aboutにそんな記事を準備中)で、本来は自分のマネージメントの選手にそれをやらせるのはおかしな話。G-BAZOOKAでも一回戦がミドル級のマグナム酒井選手と聞いてかなり逡巡したのに、また同じ事になってるんですな。
 ただ、現在アレックスはトーナメントに優勝して非常に気持ちが乗って来ている所で、練習もこれまでになく充実してるし、ここでブランクを作ってしまってはメンタル的にもよくない。また間の悪い事に、次の試合をする予定で交渉していた件が対戦相手の問題で座礁してしまい、このままだと夏まで一切試合が組んであげられないかもしれないという状況に陥ってしまって。アレックスはすっかり5月に試合をする気で、ずっと臨戦態勢だし、その出鼻を挫くのも忍びない。さてどうしたもんかと悩んでいたところに降って湧いたのが、このMARSのオファーだったのであります。
 時期的にはベスト、金銭的条件もなかなかいい。こうなってくるとマネージメントの意見は、あくまで“希望”でしかないわけで。最後は、当人の“闘いたい”という意志を最優先するしかないんですな。



 ただ、一応マッチメイクに至るまでに、悪あがきはしてはみました。
 MARSには韓国でポール・スワロンスキー選手を下したばかりのアレクサンダー・ユスティノフ選手や、ちょっとここでは名前を出す訳には行かないのだが、相当面白い組み合わせになるような選手のブッキングルートがあると聞いてたんで、MARSの事務局の人にはその線でいくつか逆提案もしてみたんですが、ユスティノフはビザの問題でアウト。その他の選手も“いろいろな”問題があって、結局形にならず。最終的には、ずっと参戦予定でカードの埋まらなかったネイサン選手との対戦という形で落ち着くことになってしまったのでありました。
 キャリア/実力共に、キック5戦目のアレックスを遥かに凌ぐ相手だけに、決して侮る事の出来ない強敵だし、変な話、勝ち負けを度外視しても非常に勉強になる試合だとは思います。全然有利だとも思わないし、負けも十分あり得る。それに今回はネイサン選手の必殺技である肘打ちアリのルールになりそうなので、一発が決まれば、サイズは関係ない勝負。当日幕張まで足を運んでくださるお客さんには、結構スリリングな試合を見てもらえる事になるとは思うんですけどね。
 ただ、G-BAZOOKAでのマグナム酒井選手戦に続いて、また10kg以上軽い選手との対戦になってしまったので、仮に勝ってもマスコミ筋にはまたイジ悪な事を書かれるだろうし、ばうれびでもそのことを度外視した記事を書いたら叱られるだろーなーと、ちょっと今から気が重かったりするのも事実。
 まあ、今後K-1とかからオファー貰ったとして、チェ・ホンマンとかセーム“元祖・巨神兵”シュルトと試合を組まれたら、今度はチビ扱いされるのはこっちなんで、そのとき逃げなきゃ許してもらえますかね?(笑)。


 さて、この大会では、アレックスのトレーナーを務めている空柔拳の小川孔久(よしひさ)選手もプロデビューが決定しております。
 2001年にプロキックボクシング選手の登竜門として名高い全日本新空手軽量級に参戦。現在全日本キック/K-1で活躍中の山本優弥選手と決勝を闘って敗れ、その後、一旦は家庭の都合もあり現役を引退。アレックスのトレーナーをやるうちに、総合格闘技に興味が出て来て、現役復帰を決意したという遅咲きの32才。なかなかの苦労人であります。
 今回は怪我で欠場する石黒選手の代打と言う事で、キック戦になっちゃうんで、苦戦は必至。ただ、元々空手家なんで全くの畑違いとも言い難いし。アレックス同様、ここに至るまでには“いろいろ”あったものの、降って湧いたこのチャンスをモノにして欲しいなーと祈るばかりであります。

2006-05-11 05:18 この記事だけ表示
 
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