桜庭移籍“事件”の波紋[井田英登]

 格闘技界にとってこのGWは、桜庭和志選手の移籍を巡る“事件”で終始したといってもいいのではないだろうか。
 まず、黄金週間突入にぶつけるように、スポーツ新聞紙上で、高田道場離脱のニュースが報じられ、その段階では高田道場との専属契約満了による円満退社ーー今後もPRIDEマットでの活動を継続する、という内容が伝えられた。
 正直いえば、このニュース一ヶ月近く前から関係者の間では既に囁かれていた事実ではあったのだが、PRIDE統括本部長という立場にある高田延彦氏と袂を分かった桜庭が、そのままPRIDEに残るという選択肢は考えにくい。かといってここ数年、確執関係にあるK-1陣営に動くのであれば、契約関係の処理はどうなるのだろう? 込み入った政治関係の“交通整理”が完了しない限り、当事者達の口からはどんな情報も漏れては来ない。
 当然、マスコミサイドも、情勢が掴めるまでは動けない。なぜ独立と言う事態が生じたのか、また次に上がるリングのアテはあるのか、またこれまで躱された契約関係に齟齬は生じないのか? こうした“裏”が取れない限り、情報は“未確認”のままであり、おいそれと記事にすることはできない。僕自身、いくつかのルートを使って情報把握に動いては見たのだが、結局記事化できるレベルのきっちりした“絵”は見えて来ず、情報を寝かしたままにせざるを得なかった。
 今回トップを切って記事掲載に踏み切ったのは東京スポーツだが、彼らの書いた「PRIDEマット残留」という情報は、結果的に事実にはならなかった。記事掲載から3日後の5/3に代々木体育館で開催された「HERO'S」に、当の桜庭が姿を現し、次の活動の舞台をK-1サイドに移す事を表明してしまったからだ。
 この一連の動きを見ていくと、最初に東スポに出た記事は「PRIDE残留」という“新聞辞令”で、 K-1移籍を牽制する意図が隠れているのではないかと読む事が出来る。逆に、若干唐突にも見えた「HERO'S」登場劇も、記事の影響力を打ち消す意味合いで、“このタイミング以外ない”という形で敢行されたのではないかという気がして来る。真相はあくまでヤブの中だが。
 スーパースタークラス選手の移籍話だけに、それによって大きなお金も動くだろうし、利権を失う人、また新たにチャンスを掴む人も出て来る。色々な人々の思惑が錯綜する状況では、ニュースを読む視線にもまた一層の深さが求められることになる。
 既に、K-1陣営入りが確定した桜庭の“今後”関しては、いろいろな情報、噂が飛び交っている。いずれも裏の取れた物ではないので、ばうれび本誌でニュースにする事はまず無理というレベルの物だが。結構夢のあるプランから、もう結構という話まで諸説紛々。スターが動けばこれだけ、色々な思惑がいろいろ動くのかと、感心してしまうわけだが、プロ格闘技というのはそもそも夢を売るビジネスの側面も持っているわけであり、決して悪いことではない。むしろ、フリーに動ける選手が増え、人材流動化が促進される事で、沢山の“夢のカード”が生まれるはず。(事実、去年のキック界では、団体を渡り歩きながらその魅力を見せつけた“喧嘩師”我龍真吾やTURBΦら、フリー選手の活躍が大きな活力となった。)移籍と言えば、契約関係を盾に取ったドロドロの抗争で、ファンの気持ちを暗くさせてしまう事も多い訳だが、結果的に業界全体にエネルギーを与えるのであれば、決して忌むべき“事件”とは考えない方がいいのかもしれない。

2006-05-09 15:47 この記事だけ表示
 
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