寡黙で、過酷な彼ーー西島洋介インタビューで感じた事[井田英登]


■「ばうれび海賊版」をお世話いただいているe+のプロデューサーHさんの依頼で、21日に西島洋介選手のインタビューを担当させてもらった。収録はPRIDEの地上波放映局であるフジテレビで行われたのだが、スポーツニュース「すぽると」のゲスト出演直前ということで、場所はフジ局内の控え室。与えられた時間は、打ち合わせ前の30分だけというタイトなスケジュールだった。おかげで、窓の外から見えるお台場の壮麗な夜景を楽しむ間もなく、ひたすら質問をぶつけるだけでタイムオーバー。
 また、この人がしゃべらないんだ(笑)。なんか小銃一丁で象に立ち向かわされた感じで、ハント戦の感想、家族の事、グローブの話、いろんな角度からタマを浴びせてみるんだけど、なかなか芳しい反応が引き出せない。リズムが掴みきれなかった前半は、ちょっと冷や汗ものだった。
 ただ、PRIDE参戦までの経緯を聞き始めたあたりから、ちょっと歯車があい始めた感じで、無表情っぽかった西島選手の顔にもいろんな色彩が見え隠れし始める。(今回公開分の「前編」では、前文の煽りが長過ぎて、ここまでに至って居ないのだが。「後編」はmore betterよ(笑))特に、このリングで何をやりたいのか、何が欲しいのかという質問に対する彼の答えは、結構我が意を得たりという内容になったと思う。
 また、会場映像や、大会前の報道でさんざん煽りに使われた「ボクシング挫折」「無職時代の苦節」なんてお涙頂戴の位置づけに対して、「挫折なんかじゃない」とすっきり言い切ってくれたのは、内心快哉を叫びたい程痛快な答えだった。
 近年、すっかりビッグビジネスになった格闘技は、収入や人気を選手にもたらしたけれど、果たしてそれがいい事ばかりだったかと言えば疑問が残る。失いたくない“可処分資産”を手にしたばっかりに“娑婆っけ”が芽生え、最初にファイターを目指した時に胸に刻んだ「強くなりたい気持ち」を失った選手の、如何に多い事か。それを世間では「オトナになる」と言うのかもしれないのだが、豪邸を建てたいだけなら、わざわざ他人の顔を殴るような仕事を選ぶより、まっとうなビジネスマンになった方が早いはず。
 その点西島選手は、格闘技というスポーツに対して、びっくりするぐらいピュアなモチベーションでリングに上がっている事が感じられて、正直ウソでしょ? とさえ思った。「まだこんな選手が居たんだ?」という感じ。修行僧のような峻烈さというか、そのもの静かな外見からは想像も付かないような修羅を彼は抱えているんだなと感じた。スポーツと割り切った醒めた感性も、また名声欲しさの卑しさもない。ただ自分の強さを証明したい。自らの内側にある確信を形にしたい。ただそれだけなのだ。ある意味一途すぎて、現実に揉まれすぎたオトナからすれば“バカなんじゃネーの?”“カマトトぶってんじゃねーよ”みたいな反感も生んでしまうかもしれない。
 だが、僕個人は彼のシンプルすぎる言葉の中に、非常に研ぎすまされた熱情を確かに感じた気がする。まるでガストーチのように細く鋭い一点突破の熱情を。融通の利かない過酷な感情を。彼が言葉少ななのは、その自分の気持ちを余分な言葉で飾り立てようと言う“虚飾”がない証拠だし、語彙が乏しいのは、そんな道具を磨く暇があったら、サンドバッグをもう一発殴りたいという人生をここまでずっと貫いて来たからではないか、と思うのだ。
 ボクサー時代、彼がカメラの前で見せる必殺技「宇宙パンチ」や地下足袋シューズといった話題先行型のパフォーマンスに、世間は好奇と冷笑で遇した。悲しいかな、今回のPRIDE参戦で寄せられた注目も、半分以上は「“あの”洋介山がまたなんかヘンな事をやりだしたぞ」という温度の低いものだろう。酷い言い方をすれば、ハッスルに参戦する和泉元弥に対する視線と五十歩百歩ではないだろうか。かくいう僕自身、彼とこうして一対一の対話の時間を持つまでは、「ヨウスケザンでしょ? 今度はヨウカイザンとか言ってるし。ぜーったい食わせ物だと思うなあ」といった引き気味の先入観を持っていた事を告白しておこう。(当面はそんな「過去の前歴」が足を引っ張って、彼の心の中の硬質な部分はなかなか世間に浸透して行かないと思うし、イロモノ扱いがまだ続くだろう。)
 実際、彼の師事したオサムジムの渡辺会長は多分投機的な意識で彼に道化役を演じさせていたことはほぼ間違えない。だが、西島自身は、その異様なパフォーマンスを、「強くなるための手段」と愚直に信じて止まなかったのではないだろうか。生で話してみたその実感からすれば、あまりに本気すぎる、その“のめり込み姿勢”こそが、西島洋介と言う人を説明するのに最もふさわしい気がしてならない。
 正直、トーナメント一回戦の吉田秀彦戦は相当苦しい闘いになるだろう。だが、もし彼が僕の感じた通りの内面を持ってリングに上がってくれるのなら、勝ち負けは関係なく応援できるなと思った。もちろん当人にとって勝敗は絶対だし、このインタビューで何より感動したのは、そのひたむきな“勝利至上主義”の姿勢。西島自身も“勝ち”に一番こだわりたいと口にしていたのだけれど。
 でも、あえてそんな当人の気持ちは無視して、僕は僕なりの思い入れで彼の試合を見守りたいと思った。そう思わせるぐらい、この寡黙な男はオールドファッションで魅力的だったのだ。いやホント、もうすぐ公開される「後編」の中身にはちょっと期待して欲しい。

■業界人の中には、選手と仲良しになるのがアイデンティティみたいな奴が居て、仕事にかこつけては選手とツーショット写真を撮ってルンルン気分を満喫しているようなアホも多いのだが、ハゲでハードボイルドなワタクシにはちょっとその心理が理解不能なところがあって、そう言うのは一切ゴメンで通して来たのだが。今回は珍しく、カメラマン役を務めてくれたHさんにねだってツーショット写真を撮ってもらった。もちろん、動機は「マル坊ブラザースPART2」をでっちあげたかったから…じゃないからね(笑)。なんかこの日、この時間を彼と、大事な事を語り合った証拠が欲しかったのだ。
■たださ、ファイターでもないのに拳上げんなよ>俺。反射的に一番嫌いなポーズとってやがんの…。やっぱ、慣れない事はするもんじゃないですな(猛省)。

2006-04-29 02:44 この記事だけ表示
 
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