柔道家とマスクマン[井田英登]

年初からインフルエンザでダウン。そのまま気管支炎でお籠り状態となり、最近ようやく現場復帰(に近い状態)にこぎ着けた井田ですが、ブランクが長過ぎたせいで仕事が今年の新潟の積雪みたいになっちゃってまして、何から手をつけたもんか途方に暮れております。普段はそんな井田の除雪車がわりになってくれる井原くんが、昨日は親族の法要で田舎に帰っちゃいまして、否応無しに記者会見に駆り出される日曜日でありました。

ネタは石澤常光のHero's緊急参戦。日曜だというのに、記者の集まりがよかったのは、やはりプロレス絡みの話だったからでしょうな。会場動員ではすっかり、格闘技とプロレスが逆転したと言われる昨今なのではありますが、やっぱりポピュラリティで、まだまだプロレスに一歩譲る形になっちゃうんだなあ、とこういう時に実感する。(さすがに悔しいとまでは思わないんだけれども、格闘技サイドの人間としては、やっぱりなんか複雑。)

それを象徴してたのが、やはり石澤のマスク姿とコメント。

これまでの格闘技戦でも、彼はずーっとノーマスクの石澤名義を通して来ているんで、今回だってそのスタイルを踏襲するであろうことはほぼ九割九分堅いところ。でも会見にはサービス精神でか、それとも彼のトリッキーなキャラ故か、おなじみ“カシン様”のマスク姿で現れるから、やっぱり記者の質問は「マスクで闘うんですか?」って話に行ってしまう。

プロとして自分に注目を集めれば、まず“第0ラウンド”は勝利。
ワザとHero'sをROMANEXと言い間違えたり、猪木事務所離脱で動向が注目されてる藤田和之のネタを覗かせたり、とにかく記者の喜びそうな切り口を次々に投げて、記事が自分色に染まるように操作して行くんですな。いや、ホントその意味で徹底した“プロイズム”を感じましたね。競技一筋の“純粋格闘家”が注目を浴びだして、中途半端なリップサービスとかをやりだすと、ワザとらしくて見られないものになっちゃうもんですが。その点、バンプが骨身に染み付いてる人は、もうキャラだとか、演技のレベルじゃなくて、徹底して“その世界を生きちゃってる”感じがして、ケチの付けようが無くなってくる。

その意味ではすっかり対戦相手の秋山は話題を「食われた」形になっちゃったんだけど、アマチュア時代が長かったせいか、そこにジェラシーとかが全く感じられなかったのが面白かった。

石澤が、プロレス記事も兼務する夕刊紙/スポーツ紙系の記者達相手に「入場曲に“男の勲章”は使わない」「中西と永田は冷たいから、勝手にチームジャパンを辞めてしまった。残ったのは藤田だけ」「試合の最後は敬礼する」みたいな“漫談”に興じてる姿を、いかにも面白そーに見てるんですな。

「あー、これがプロレスの世界かぁ」みたいな表情でして、まるで3日後に試合する相手という感じで見てない。すぐ真横で見てるのに距離が遠いというか、まるでヒト事な感じ。コメントでも「マスクをして会見に来た人を見たのは初めてなんで、表情が読めない」みたいな事を言ってましたが、実際寄り添ってのツーショットでも、しみじみマスク姿の石澤に見入ってたりして、“柔道家”秋山的にとってマスクマンという存在は、よほど珍しかった模様(笑)

例えば年末の「Dynamite!!」の前ウチ会見なんかだと、須藤が例の仙人ライクな“漫談”をやりだすと、ベルトを挟んで隣に座っているKIDの眉の上辺りに“緊迫感”が凝集したような何とも言えない空気感が漂いだして、それはそれは見ていてハラハラしたもんですが(笑)。それと比べると、今日の石澤と秋山のツーショットは、まるで対照的な平和的なものでありました。

この空気感が試合の時にどう影響するのか、ちょっと見物ではありますが。

でもこの試合、ホントのテーマは、奇しくも石澤が皮肉っぽく言った「オリンピックに行けなかった同士の戦い」ーー柔道とアマレスで、それぞれオリンピック候補まで行ったアスリートの「異種グラップリング合戦」の趣がある対決。プロレスファン大喜びのこのカードではありますが、格闘技ファンには是非表面的なギミック(マスク)を外して、競技的に楽しんでいただきたいと、願ってやまないのであります。



2006-03-13 08:39 この記事だけ表示
 
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