ゴン格の“休刊”とバウレビ[井原芳徳]


2月21日に31歳になった途端、いろんなことが起こる。
「ゴング格闘技」“休刊”の知らせもその一つだ。

誕生日の翌朝、修斗協会のKID選手らへの処分の件をニュースにし一息ついていると、ゴン格の編集部から電話が。
昨日(21日)に“休刊”を伝えられたという話だった。23日発売号が完成した直後、お店にならぶ直前というタイミング。一昨年だったか、青山ブックセンターが突然閉鎖するという騒動があったが、何かそれを思い起こさせる唐突さだ。

厳密に言うと“休刊”というより、宮地克二編集長が辞め、現編集部も解散するという話。
母体の日本スポーツ出版社は、数ヶ月以内に別体制で新しい格闘技雑誌を発刊するつもりらしい。全く経験のない真っ白なスタッフが新規参入してくるというのではなく、ここ数年で廃刊/休刊になった格闘技雑誌の関係者が関わるのでは? 外部の編集プロダクションが作るのでは? という噂がもっぱらだ。
歴史のある「ゴング格闘技」の誌名を継ぐのか、新しいタイトルで新創刊となるのかわからないが、少なくとも、宮地さん体制で出される号としては、2月23日発売の4月号で“休刊”だったことは確かだ。

「ゴン格」という雑誌も近年は編集体制がコロコロ変わる傾向があって、3年ほど前にも外部の編プロに委託する形式を取った事がある。この時受託したのが今は白夜書房で出ている「アッパー」編集部。
ただ、その前の宮地さん体制で作られていた編集部は結束が堅く、「アッパーゴン格」に関わるスタッフは少なかった。その後、日本スポーツ出版社自体がM&Aされて経営陣が変わった影響もあって、丁度1年前にもう一度、「宮地ゴン格」が復活したという経緯がある。この時は、スポーツナビの格闘技部門のチーフだったMさんが編集部入りするという仰天人事もあって、これで当分「ゴン格」は盤石の体制で動くんだろうなと思っていたが…。



ちなみに僕も、この「宮地ゴン格」にはライターとして少し関わっていた。身分としてはバウレビ編集部の人間だが、ゴン格から協力依頼があって、キックや女子格闘技の原稿を書いていた。大会レポートやインタビューものの記名原稿から、大会観戦ナビという今後の大会の見所を紹介する無記名原稿まで。主に白黒ページの人だったが、これはウチの井田編集長もやって来た“外貨獲得”政策で、「少し外の水も飲んで修行してこい」という了承済みの“出稽古”も兼ねていた。

国内のキック系団体を網羅的に見ている記者がこの業界では少ないので、書く対象自体はニッチなものが多かった。でも、一般格闘技ファンに伝わる面白さがあり、多くの人に関心を持ってもらいたいと思ったので、あえて薄目の味付けの原稿にしていた。
雑誌では昔の記事にリンク飛ばすようなことができないので、書き方もおのずと違ってくるのだが、それでもバウレビでやっているよりも意識的に、一般的な話題を話の枕や軸に使ったり、試合に至る背景をわざわざ古い話から説明し直したり、いろいろ工夫をこらしていた。
だが他のゴン格の記事は、好き嫌いは抜きにして、豊富な前提知識を持っていないと読み始めからつまずくものが多い。一言でいえば「マニア志向」。僕の「ポピュラー志向」な書き方は自分でも浮いてる感じがしたが、それでも依頼してもらえていたことはシンプルにうれしかった。



思えばこの仕事を始めて約6年、格闘技専門誌は休刊/創刊/体制変更等いろいろあった。
さっき書いたとおり「ゴン格」が「アッパー」編集部で運営されていた頃があったし、「SRS-DX」、「Kマガジン」は休刊。「格闘伝説」は始まって終わってまた始まって…。「フルコンタクトKARATE」も表面上は粛々と刊行されていたが、実は編集部員が一新されていたり。また、「宮地ゴン格」の主力ライターが集まって「ガチ」というムックが二号ばかり連続で出されて、定期刊行になるのかなと思っていたら、ストップしてしまって…。
いわゆる“格闘技ブーム”の中、活字メディアは色々な消長が繰り返された戦国時代であったことがよくわかる。ただ“与党”「格闘技通信」だけは、編集長が変わったり若干書き手の顔ぶれが変わった程度で、外の波風の影響はあまりなかった感じがする。



でも、ホントは一番変わってないのが、ウチかもしれない。
「ネット媒体と活字を一括りにするな」と言われそうだが、バウレビの後にネットでスポナビとGBRもスタートしたことで、専門誌の売上や編集方針に及ぼした影響は少なくないはず。ただ、ネットの世界は活字メディアと違うのか、他のサイトのスタートの影響が同じ畑のバウレビにあったかというと、ほどんど無かったと思う。
当然比較されることは多く、「情報を早く伝えなきゃ」というプレッシャーも増えた。だが編集長の井田はご存知の通り(?)「ネットやから早いって誰が決めてん? よそと競争なんかすんな」みたいなユルめの人だし、僕自身「ウチの“伝えるべき事”をゆっくりでもいいからちゃんと伝えていれば、読者は信頼してついてきてくれる」という確信があった。実際、配信開始からこの春で9年になるが、あいかわらずページビュー数は少しずつとはいえ増え続けている。


じゃあ、その“伝えるべき事”って何かって?

うーん、それを書き出すと長くなりそうだし、正直、自分でもうまく考えがまとまっていないのだが、さっきゴン格の原稿のところで書いた「ポピュラー志向」という言葉が両輪のうちの一輪になっているような気がする。
「格闘技ファンならこれぐらい判ってて当然」みたいな思い込みで記事を書かないように気をつけているし、情報の重要性を僕らのサイドでなるべくジャッジしないようにしている。東京ドームの試合も後楽園の試合も、それぞれのファンにとっての重要さは公平なはずだから。

その一方、個々の試合について、バウトレビューの誌名になっている「レビュー」(批評)の部分、「自分たちの感性に忠実に批評をする」という部分を無くさないようにしている。時に偏見と受け取られても、「僕らが試合を見て感じた“興奮”や“問題点”」を忠実に伝えることは絶対譲れない。それが、もう一方の車輪になっている。



今のトップページのように、ノゲイラ選手と須藤信充選手が普通に並び、独特の光を放っているのがバウレビなんだと思うが、果たしてどれだけの読者にその光が届いているのかどうか。ただ、太陽も便所の裸電球もそんな事は考えずに、自分たちの光を粛々と放っているはず。それが9年、マイペースでやってこれた理由なのかもしれない。



2006-02-28 17:23 この記事だけ表示
 
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