新イベントMARSで感じたこと[星“tomoyasu“顕雄]

 えー、みなさん、はじめまして。

 只今ご紹介にあずかりました、小林秀貴こと、星“tomoyasu“顕雄です。昨年12月末に、7年10カ月間の永きに渡り(?)勤めていた、某産経新聞社を退社しまして、めでたくフリーの身になりました。これまで、ばうれびでは小林名義で執筆してきましたが、せっかくご挨拶の機会なので、ちょっとマスクを脱いでみました。ミドルネームの“tomoyasu”は、顔が布袋寅泰に似てると言われるからです。嬉しいような嬉しくないような…。でも今井美樹と結婚できるならいーかなー。

 さて、今回、取材担当として2月4日に行われた総合の大会「MARS」で気がついたことをBLOGに書くようにお鉢が回って来ました。多分、メインイベントのレポートの最後にすこし“苦言”のようなコメントを書いたから、「なんか感じたんなら、もうちょい正面から書いてみぃ!」という井田編集長からの「愛のムチ」なのでしょうか。僕、Mじゃないですから!やめてください編集長!

 でも、考えれば考えるほど、難しいお題だなーと、正直、少し戸惑っております。

 試合だけでなく、興行の雰囲気や、興行のトータルな出来についても客観的なレポートをしていくのは、記者の大事な仕事だとは思います。でも、プロモーターや選手にとってみれば、マイナス点を指摘されるのは、決してうれしい事ではないでしょう。一歩間違うと営業妨害にもなりかねないので、うっかりしたことは書けないんですが、逆に高いチケット代を払って会場に足を運ぶファンにとって、イベントが本当に楽しめる内容だったかどうか、また次に足を運ぶ値打ちがあるか、というのはやはり気になる事だと思います。ちょっと辛口になるかもしれないですが、次のイベントがさらに素晴らしいものになるように祈ってのこと。プロモーターの皆様、選手の皆様、どうか怒らないでください!



 さて、この日の有明コロシアムの客席は、正直、寂しいものがありました。

 まあ、新イベントの旗揚げというのは、ただでさえ前例がありませんから、どうしても厳しいものになります。今を時めくPRIDEだって最初のPRIDE.1では「高田VSヒクソン」という黄金カードを投入しながら、東京ドームという大箱を持て余していたわけですから、これは当然の現象かもしれません。

 ましてや、この大会は、爆発的人気を誇る魔裟斗選手が出場する「K-1MAX日本代表トーナメント」と同日開催の「裏番組」。というか、ここで裏話をお伝えすると、本来、MAXが開催予定で押えていた会場が、この有明コロシアムだったそうです。ただ魔裟斗選手の本格復帰が決まったので、MAXはさらに大きな動員の見込めるさいたまスーパーアリーナに会場がシフトし、その“空き”を譲りうけたのが、「MARS」のスタートだったようなのです。

 総合と立ち技の違いはあれ、やはりこれは格闘技ファンにとって苦しい選択を強いるもの。できれば同日開催は避けて欲しかったなあ、という気がしてなりません。また、このリングで闘う選手達も大会場での新イベントという事で、この大会に賭ける気持ちは大きかったはず。一人でも多くのファンにその試合を見てもらえるように、イベント主催者は努力してあげてほしいものです。



 今回のMARSで僕が気になったのは、「この大会は誰のための物なんだろう?」という事でした。

 例えば、本編のレポートの方にも書きましたが、12試合もあるのに、試合開始が遅かった、ということ。コレは次回には絶対改善して欲しいポイントですね。

 地方の方には分かりにくいかもしれないですが、有明コロシアムというのは、東京湾に作られた埋め立て地で、いわゆる「お台場」のさらに東のハズレに位置する辺鄙、と言っていい会場なのです。元々テニス用に作られた会場で、コンクリート作りのスリバチ状のオープンエア会場に、屋根を乗っけたという作りなので、寒波の盛りの2月にイベントをやるのはかなりキツい場所。観戦の必需品はコート(!)。そんな場所で夜の10時も過ぎてくれば、いくら週末で、いくら熱戦が繰り広げられていたとしても試合に集中するのはキツいというもの。まして、週末気分で彼女や子供を同伴したお客さんなんかは、「ねー、もーかえろーよー」と駄々をこねられちゃうでしょう。

 一見、些細なことに思えるかもしれませんが、実際試合を愉しみに会場に足を運ぶ人間にとって、こんな辛いことはないんです。

 そういう細かい観客心理も慮って欲しかったなあ、と思いますね。

 試合を取材しながら、僕はメインの試合終了のゴングを待たずして会場を後にしたお客さんが少なくなかった事が、心に引っ掛かってなりませんでした。次回はせめて開始時刻を午後4時くらいに早めてほしいものです。
 



 もうひとつお客さんの立場に立って言わせていただければ、対戦カードのラインナップがちょっと、マニアックすぎましたね〜。

 客としては、会場が「有コロ」というだけで、後楽園やディファじゃ絶対見られない、“プラスα”を期待して来るわけですよ。

 今回大会は、たしかに“世界トップに挑む日本人選手たち”という対立構図で、それぞれ対戦相手と実力が伯仲したいい試合をしたとは思います。外国人選手のラインナップも、グレイシーの大看板を背負ったホドリゴが登場し、シャオリンが脇を固めるとなれば、ある程度の“バリュー感”はあったと思います(きっと、実際ギャラも(笑))。
 ただ、そこに「わー、こんな手で来るか!」みたいなオドロキはなかった気がします。やっぱり、有明なり、横アリという大箱興行というのは、予算枠以上のサムシングが欲しいんですよね。今はPRIDEもHERO'Sもある時代です。ファンの目も肥えてきていますから、ただ豪華なラインナップ、というだけでは誰も驚かない時代になっていると思います(贅沢極まりない話ですけど)。

 そんな中で「MARSと言うのは、PRIDEでもHERO'Sでも見られない“こんな事”を実現したいから、あえて旗揚げしたんだ!」という主催者の主張がもっと見たかった気がするんですよね。

 例えば、ルール一つとっても、今回は「世界標準のMMAに沿って(金網ではなく)リングを採用した」という主催者の発言があったんですけど、僕は逆じゃないかなあと思ったりします。“世界標準”に歩み寄る、ということは、イコール“フツーになっちゃう”ことなんじゃないでしょうか。

 実際、主催のGCMは過去一年、「D.O.G.」でケージファイトという“究極の舞台”で傘下の選手を危険なルールでの戦いで鍛え上げてきた実績があるのですから、あえて今回、ケージの中で世界トップの選手と真剣勝負の極北を争う姿を見せるべきだったんじゃないかなと思います。

“俺たちが一年間じっくり練り上げて来た価値観を、大舞台で問うんだ!”みたいな、そんな“熱い思い”が込められていれば、どんな悪条件であろうとーーそれはたとえば MAXの「裏番組」であろうと、真冬の有明であろうと、終電が危なそうな時間設定であろうと、共感してくれるファンは必ず多くいるんじゃないでしょうか。



 あともうひとつ、ライター“tomoyasu“の目から見た感想。それはセミとメインの試合内容。これに尽きますね。

 光岡選手も門馬選手も、この日の試合(それぞれシャオリン戦、ホドリゴ戦)に勝てば、次にビッグチャンスが巡ってくることは、容易に想像がつくわけですよ。

 その大一番での、彼らの戦いぶりが気になりました。

 本来なら、もっとなりふり構わず「世界最高峰に挑むチャレンジャー」としての“活きの良さ”を見たかった気がします。でも、実際の内容は、「負けない」だけの、“堅い”試合をしてしまったように見受けられました。これは中堅(失礼)選手がよく陥る「罠」といってもいいでしょう。

 たとえば、KID選手がなぜあれほどまでに短期間で、スターダムにのし上がったのか?というと、それは単に技術と勝ち星だけでは語れないと思うんです。彼は修斗時代、ステファン・パーリング戦でタックルにいった際にヒザ蹴りを合わされ、額をぱっくり割ってTKO負けを喫していますし、彼の知名度を一気に上げた、2004年のK-1MAX日本代表決定トーナメントでは、村浜武洋の得意とするショートレンジに敢えて飛び込んだ上で、ショートアッパーを当てて KO勝ちを収めています。

 そういった負けをも厭わないチャレンジ精神が観衆の心を打って、あれだけのカリスマ性を得たわけで、決して、「勝ち」という結果だけにこだわって、のし上がってきた選手ではないということです。

 五味選手も言ってますよね。「大晦日に判定?ダメダメ!KOじゃなきゃ!」って。

 たしかに「勝ち」という結果は多くのものをもたらしてくれます。判定であろうが、バッティングによるドクターストップであろうが、もし今、五味やKID や魔裟斗に勝つ日本人選手が現れたら、その選手は一夜にしてスターになれるかもしれません。

 しかし、「勝ち」という結果にこだわるあまり、試合でチャレンジできなくなってしまったら、試合は“ただ一流選手と同じリングにあがっただけ”、“豪華な舞台で闘っただけ”で終わってしまいます。

 先に述べた興行論での“独自性”の話も、結局根っこの問題は同じなのではないでしょうか?

 “自分にしかできないチャレンジ”や“このリングでしか見せられない冒険”、そんな「スペシャル」を見せない限り、隆盛を誇る今の格闘技市場の中で、勝ち抜いて行く事はできないのではないでしょうか?

 その意味で、“TONIGHT'S SPECIAL”を見せてくれたのが、矢野卓見選手でした。

 彼はアブダビコンバット準優勝の肩書きを持つ難敵を相手にしながら、スピニングチョークをいいようにかけさせておいて、一気にTKシザースの要領でバックを奪うという離れ業をやってのけ、観客の歓声を浴びていました。

 結果的に矢野選手は三角絞めで失神KO負けを喫してしまったわけですが、彼が見せたチャレンジ精神こそ、僕が見たかったものでした。彼の戦いぶりの中にこそ、次回の「MARS」に繋がる、大きなヒントが隠れていたように思えてなりません。


 色々書きましたが、僕も取材者である以前に、パラエストラ某支部に所属するファイターの端くれの端くれであります。格闘技界がこれまで以上に発展して欲しいという気持ちは、誰よりも強く持っています。ですから、あんまりコ煩い事を書く奴だ、と思ったりしないでください!(笑)。

 では今後とも、よろしくお願いします。

2006-02-16 13:11 この記事だけ表示
 
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