エネルギーにプラス[井原芳徳]

「正月休みはあるの?」

 同業者、選手、友人、家族、近所のパン屋のおばちゃん。この時期同じことをあらゆる人に聞かれます。大みそかにビッグイベントがあり、1月4日に水道橋へ『初詣』をするのが恒例となっているこの業界の者にとって、正月休みは普通の連休程度の意味合いしかありません。ちなみに『初詣』とは、格闘技記者なら全日本キック後楽園大会、プロレス記者なら新日本プロレスドーム大会のことを差します。

 元旦は大みそかのイベントの記事の処理でまともに眠れないから、けだるい気分のまま昼下がりに目覚め、一日が潰れます。初詣(=こっちは普通の意味での)は1月2日。3日はたぶん夕方から全日本キックの前日計量の取材に行くでしょう。休んでいる間も身内から必ずといっていいほど大みそかの感想や裏話を聞かれますから、仕事気分が完全に抜けきることはありません。03年は名古屋のDynamite!!の翌朝、近鉄特急で大阪の実家に帰りましたが、去年と今年は…。
 まあ、こういう正月の過ごし方にもすっかり慣れてしまったので苦痛ではないのですが、我ながらけったいな人生に迷い込んでしまったもんだと感じてしまいます。つまり1年の境目があるようで無いような状態。むしろ各団体の年内最終興行がおおむね終了する12月前半までが今年で、大みそかは来年に含めたほうが良いかもしれませんね。その基準で考えれば、僕にとっての2005年は、12月18日のR.I.S.E.ディファ大会で終わったと言えます。

 そして幸いなことに、この大会は“1年の締めくくり”にふさわしい好勝負連続の内容となりました。TATSUJI選手が我龍真吾選手の要求通り殴り合いに応じ、トーナメントでは見事優勝。ワンマッチでは尾崎圭司選手がMA暫定王者の水町浩選手を上段後ろ回し蹴りの大技で豪快KO。これらも非常に印象的でしたが、それ以上に観客にインパクトを残したのは、トーナメント一回戦でプロデビュー戦の水谷秀樹選手がK-1 MAX出場経験者の城戸康裕選手に左ハイキックで逆転KO勝ちした一戦でした。

 水谷選手とはたまたまこの試合の以前から接点がありました。10月のR.I.S.E.で水谷選手がトーナメント出場の挨拶をされたのですが、その時の写真をバウレビに掲載したところ、ご本人からメールが来て、水谷選手が指導されている「空手維新」のホームページに転載したいという内容が書かれていました。
 「空手維新」という名前が突然出てきたのでビックリ。これはバウレビの取材をサポートしてくださっている山口龍さんが、大森ゴールドジムで主宰されている空手教室のこと。山口さんは現在神戸に転勤され、空手維新は水谷選手が中心となって活動しています。その後の記者会見でも直接お話しをする機会があり、そのとても誠実で謙虚な人柄から「この人、ひょっとすると何かやり遂げるんじゃないか?」とうっすら感じはしたのですが、まさかここまで驚きのファイトを繰り広げてくれるとは思いもしませんでした。
 「他の選手と力の差はあると思いますが、自分はハートで一番だと思っています」。水谷選手は会見でそうおっしゃってましたが、持っている技術とパワーが最大限に引き出されたのも、水谷選手のハートの強さの賜物でしょう。
 自分の思い入れのある選手が頑張れば、僕もエネルギーをもらえる。休みの少ないタフな仕事ですが、リングサイドでカメラを構えることで、メモにペンを走らせることで、休みで得るものより大きなものを得られるから、ここまで続けてこられたのかもしれません。


 僕がバウレビで個人的に思い入れの強い選手についての試合レポートを書く時、その思い入れが一般的な基準を逸脱していないか、いつも細心の注意を払っています。ただ逆に気を使い過ぎて、思い入れの持つ温もりがレポートから失せてしまうこともしばしば。その冷たさも僕の持ち味だと他の方から好評をいただくこともありますが、自分ではもうちょっと火加減調整がうまくならないとダメだなあと思っていました。
 そんな折、バウレビのブログ「ばうれび海賊版」がe+さんで始まることに。いわばバウレビ本誌のレポートの“余熱”エネルギーを活用する場でもありますが、個人的な思い入れの持つ熱をあえて思いっきり放出してみることで、火加減調整の実験場にもしていければと思っています。そしてe+さんのブログで得たエネルギーをさらにバウレビ本誌のエネルギー、あるいは僕自身の生きるエネルギーのプラスにしていければ最高です。



2005-12-30 01:21 この記事だけ表示
 
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